介護のきほん vol.7
訪問調査とは?どんなことを聞かれるの?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。


Q:市役所の窓口で父の要介護認定の申請手続きをしました。
役所の人から「後日、調査員が訪問調査に伺います」と言われたのですが、どんな人が来るのでしょうか。
また、訪問調査では具体的にどんなことを聞かれますか?事前に準備しておくことはあるのでしょうか?

A:訪問調査(認定調査ともいう)は、要介護度を決めるために必要な調査です。
要介護認定の申請手続きをすると、本人の状態を確認するために、市区町村の訪問調査員が自宅を訪れます。本人が施設や病院にいる場合は、そこに調査員が来てくれます。訪問する調査員は基本的に1名です。

今回は、介護保険の訪問調査について、調査で聞かれる内容や調査を受ける際のポイントをご紹介します。

1.訪問調査で聞かれる主な内容

訪問調査は、74項目の「基本調査」と「特記事項」からなる全国共通の「認定調査票」に基づいて行われます。
調査内容は、本人や家族から聞き取る調査のほかに、身体機能を確認するために本人に動いてもらう調査もあります。調査にかかる時間は、30分から1時間程度です。

以下は、訪問調査で聞かれる主な内容です。

調査項目質問内容
身体・動作について・手や足にマヒがありますか・寝返りや起き上がりは一人でできますか・支えなしで5メートル歩けますか・座ったままの姿勢を保つことができますか など
生活機能について・入浴や食事に介助が必要ですか・誰の手も借りずに排尿・排便ができますか・歯磨きや着替えに介助が必要ですか など
認知機能について・名前や生年月日を言えますか・自分がいる場所が答えられますか・毎日の日課を理解できますか など
社会生活について・自分でお金の管理ができますか・薬は自分で飲めますか・介助なしに買い物ができますか・簡単な料理は作れますか など
精神状態や行動について・物を取られたなどと被害的になることはありますか・泣いたり笑ったりと感情が不安定になることがありますか・介護に抵抗することはありますか・大声を出すことが頻繁にありますか など
最近受けた治療について・点滴を受けましたか・人工透析を受けましたか​・床ずれ(じょくそう)の治療を受けましたか・痛みを軽減する処置を受けましたか など

調査項目の詳細は、厚労省のホームページから確認できます。
急に質問されると、正確に答えられない可能性もありますので、事前に確認しておくと安心ですね。

2.訪問調査を受けるポイント

要介護認定の結果は、訪問調査の受け方次第で大きく変わります。
適正な認定結果を得るために、以下のポイントを押さえておきましょう。

家族が立ち会う 

訪問調査で適正な判定を受けるには、普段の状況を調査員へ把握してもらう必要があります。

しかし、訪問調査では本人が見栄を張って普段できないことを調査員に「できる」と言ったり、普段できないことでも頑張ってやってしまうことがよくあります。

また、本人が認知症の場合は、ご自身の状況を正しく伝えられないこともあります。
そのため、本人の様子をよく知る家族が必ず立ち会い、日常の様子をしっかり伝えることが大切です。

家族が立ち会うことで、本人が答える内容と家族の認識にズレがあった場合にも、正しい状況を補足して調査員に伝えることができます。

なお、本人の目の前で伝えにくいことは、あとで本人がいないところで伝えるか、それが難しい場合は、メモしておき、あとで調査員に渡すとよいでしょう。

伝えたいことや本人の状況はメモしておく

訪問調査では、限られた時間のなかで、74項目の質問に正確に答えなければなりません。
大切なことを伝え忘れないように、事前に以下の点をメモしておきましょう。

・普段の介護の状況
・日常生活に困っていること
・認知症の症状、発生の頻度
・今までかかった病気やけが、その時期
・内服中の薬

日によって症状に波がある場合、具体的にどのような症状があるのか、日常生活でどのような介護が発生しているのかなど普段の様子をメモにまとめておくとよいでしょう。

また認知症の症状がある場合は、具体的な症状や発生の頻度(月単位・週単位)までメモにして準備しておきましょう。

たとえば・・
「一人で散歩に出掛けて家に帰れなくなり、地域の人や警察に保護されることが月に1〜2回ある」
「娘に通帳や財布を取られた、と騒ぐことが週に2〜3回ある」など。

いつどんな行動や症状があったのかを日頃から記録しておくと、認定調査のときに役立ちますよ。

できるだけ詳しく伝える

日常生活で困っていることや、普段の介護状況はできるだけ詳細に伝えましょう。

たとえば・・
「財布を盗られた」と言って騒ぐたびに家族がなだめて落ち着くまで一緒に探している」
「トイレの場所がわからなくなり、廊下やゴミ箱に排泄するため、そのたびに家族が後始末をしている」
など。

要介護度は「介護にどのくらい手間や負担がかかるのか」を基準に判定するため、重要な内容は調査員が調査表に「特記事項」として記入してくれます。

家族が日常生活で困っていることは、とくに詳しく伝えてくださいね。