義父がいよいよ危ない!?

夫は、実の両親と折り合いが悪い。
夫の母は「教育ママ」で「俺は見栄の道具でしかなかった」と、夫は言う。
猛烈サラリーマン(死語)だった義父に対しての夫の“所感”は、「話をしたことがないから、どんな人か知らない」。
結婚して30年あまり、夫の実家に対して「はぁ??」と思うことは多々あれど、義両親に対して率先してブチ切れる夫を前に、私は「夫のなだめ役」に回るしかなかった。
昨年末、義母から電話がかかってきて「おとうさん、年を越せるかわからないから会いにきて」と、言われた。90歳を迎える義父の体調が芳しくないとは聞いていたが、「そんなに悪い!?」と慌ててかけつけると、いつも通りの義父だった。
けれども、義母は「今日、お父さんの葬儀について決めたい」と言う。
「本人を目の前に、そんな相談をするのか!」と驚いたが、葬儀場やお墓のことなどを「義父と一緒」に決めた。
義実家の話をすると不機嫌になる夫
この日、義実家からの帰りの電車では、夫のお姉さんも一緒だった。
お姉さんと二人姉弟だが、「性別も違うし、年も離れているから話したことはない」と、夫は言う。
実際にお姉さんと会うのは年に一回あるかないかぐらいだ。そんなお姉さんが、私に言う。
「お父さんが危ないから実家に顔を出してねって昨年から言っていたけれども、相変わらずよね」。相変わらずというのは、「実家に全く寄り付かない」ということだ。
「すいません、本当に」と、私が謝るしかない。夫はお姉さんから言われた言葉が気に入らないと、プイっと怒って別の車両に行ってしまっている。
この期に及んで、夫は「俺は知らない。実家が大嫌いだから、考えたくもない」の一点張りである。
義実家の話をしようものなら、たちまち不機嫌になる。
結婚を決めた理由
自宅に戻ってから、夫に聞いてみる。
「義実家に対してのあなたの在り方、問題だと思う。それって、子どもたちに対して見せられる背中だと思う?」と。夫は、「きれいごと言わないの!」と、再びブチ切れた。
これ以上言ったところで家の中の雰囲気が悪くなるので、深追いはしない。
第一、「夫の実家問題」なのに、なぜ、私が悪者にならなければいけない?考えれば考えるほど、モヤモヤしてくる。
モヤモヤした時は、馴染みのタロット占い師さんのところに行くことにしている。心のクイックマッサージ。
齢50歳をすぎた頃から、「暗い話を友人にしたところで、迷惑だろう」と考えるようになり、サクッとお金を払って話を聞いてもらうようになった。
もちろん占いもしてもらうが、主な目的は「第三者に話を聞いてもらう」ということだ。
占い師さんは、目の前に広げたタロットカードを眺めながら「旦那さん、子どもみたいな性格ね」と言う。うん、知っている。夫は、「そーゆー部分もある人」なのだ。
もちろん「良い部分」の方が多いから、結婚生活を続けているのだけれど。
そもそも結婚を決めたのは、夫が捨て犬みたいだったからだ。
表面上は「何の問題もない家庭」に見える義実家だが、中身は空洞。
空虚さしか感じない家庭で育った夫は「俺は天涯孤独だから、結婚して幸せな家庭を築きたい」と言っていた。
猪突猛進の夫からのアプローチにほだされて、結婚することにした。
幼い頃の心の傷から、未だ血が噴き出ている人

実は、「夫の家庭みたいな家庭は、珍しくないのでは?」と、思っている。
いきなり主語が大きくなるが、高度成長期時代の「猛烈サラリーマン」+「専業主婦」。このカップルが世間体だけ考えて営んだ家庭なんて、星の数ほどあるだろう。
この時代の主婦のことを、ある社会学者は「高度成長期の産業廃棄物」と呼んでいた。
家庭に閉じ込められ、不満と鬱屈を溜めた母親に育てられた歪は表面に出づらいが、社会問題なのではないか?
私がそう考えるに至ったのは、大人になってからだ。
私が育った家庭も、夫と似たような問題を孕んでいる。私自身、成人してからカウンセリングに通った。
ママ友たちと「育った家庭の話」をすると、類は友を呼ぶのか、似たり寄ったりの境遇で、誰一人として「両親のことを大好き」という人はいなかった。
いつしか、「ホームドラマに出てくるような幸せな家庭は幻想でしかないんだ」と思うようになった。
夫は悪い人ではない。ただし、自分の実家の話となると、途端に豹変する。
ある時、「これって、幼い頃の心の傷から血が噴き出ている状態なのかもしれない」と、気がついた。
私は自覚的にカウンセリングを受けたり、ママ友との何気ない会話もピアサポートのような効果があったのかもしれない。
「育った家庭で受けた幼い頃の心の傷」は、私にとって大問題だったから、関連の書籍も数多く読んだ。こんなふうに膨大なエネルギーと時間を投下した分、だいぶ傷が癒えたと感じている。
けれども、夫はどうか? 男性は自分の心に向き合う習慣がない人も多いという。
大黒柱のサラリーマンの夫は、私のような時間の過ごし方はしていない。
そうであるなら、夫の義実家への態度も仕方ないのかもしれない。
義実家問題はPTA役員と同じ
それで、だ。自問自答してみる。
このまま、「実家嫌い」の夫の肩越しに、義実家に対して「知らんぷり」を決め込んで、私は後悔しないのだろうか? と。
話は少しズレるが、子どものPTA役員を率先してやってきた。PTA会長をやるほどに。
夫の義実家に対しての感覚は、PTA役員を「知らんぷり」することに似ている。PTA役員を決める互選会の時の、あの微妙な雰囲気が大嫌いで、「私、やります」と率先して手をあげて生きてきた。
PTA役員を引き受けたことで、良かったことも、もちろん大変だったこともある。
けれども、今、総括するなれば、「PTA役員は、子育て時代を豊かにしてくれた」と感じている。
そうであるなら、今、覚悟を決めて「夫の実家問題」に向き合ってみようか。
まずは、月に1回、3時間、夫の実家に行ってみることにしよう。