こうして遠距離介護は始まった その3
介護の現場は「即決!」が基本

ヘルパーさんが来るようになって、トイレだけでなくキッチンも見違えるようにキレイになりました。

ヘルパーさんたちは使った後、きちんと整頓、シンクもピカピカにしてくれる。母が使っていた頃は、掃除もままならない状態だったので感動です。
部屋の中も相変わらずモノが多いものの、毎日掃除機をかけてもらえるのでコギレイ。なんだか停滞していた家も活性化し始めたようです。

その一方で、母の状態は坂を転げ落ちるように悪くなる。
壁、机、椅子、食器棚など、手が届くものにすがっての伝い歩きで、どうにか家の中を移動している感じ。歩き始めた一歳児よりもはるかに危なっかしい。

ケアマネさんに相談、自宅をどう変えていいか相談しました。

すると真っ先に挙げたのが、
①2階の寝室を1階の客間に移し、生活の基盤を1階で収める。
②現在使っている布団を、介護用ベッドにする(介護保険でレンタル)。
③リビングに脱着式(突っ張り棒みたいなの)の手すりをつける(介護保険でレンタル)

両親とも夜中に何度か2階の寝室から1階のトイレに行きます。階段は一直線で急。親にとっては、薄暗い雪山を直滑降するようなもの。

そして意外だったのは、布団から起き上がる時の転倒が多いということ。
半身起き上がって膝をついてから立つ。それよりは起きてベッドに腰かけ、柵を手すりがわりにして立ち上がる方が、断然リスクが少ない。

目からウロコでした。

プロは見ているところが違う。私はずっと同じ室内を見ているので、そこに潜んでいる危険には気がつけません。

そしてケアマネさんの一言。
「今すぐレンタルを決めましょう」
え?ちょっと待って。少し考えたい、出費もあるし。と正直思いました。でも次の一言。
「こうして考えている間にも、事故は起きるんです」

確かに。私も実家にいる時間は限られているし、もしここで決めないと次に私がここに来るのは1ヶ月後。その間に転倒事故でもあったら悔やみきれない。
ケアマネさんはそういう事例を、たくさん見てきたんだろう。そのコトバは重い。
「お願いします!」

両親には事後承諾となった。予想通り拒否の嵐。
でもヘルパーさんをお願いする時もそうだったので、「だよね」とクレームをいったん受けつつも「でも大丈夫。すごく助かるよ」と。

レンタル品は、その日のうちに実家に設置されました(この素早さは介護業界の常識なの?)。
最初は「見てくれが悪い!」と文句を言っていた母も、以前からそこに手すりがあるように、自然に手を伸ばすように。

「その場で即決!」は、その後の介護の指針となりました。