介護のきほん vol.6
要介護1とはどのような状態?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。


今回は、一人暮らしの父親が要介護1に認定されたという、加奈子さん(50歳)からのご相談です。

Q:一人暮らしの父(82歳)は、体力が落ち、歩く時にもつまずくことが多くなったため、初めて介護保険を申請したところ、要介護1の認定が降りました。
今後は、介護サービスの利用を検討していますが、要介護1で受けられる介護サービスの種類はどのようなものがあるのでしょうか?
また、要介護1の父は、一人暮らしを続けることができるのでしょうか?

A:介護保険制度では、要介護認定を受けた方が自立した生活を送るために必要なさまざまな介護サービスが用意されています。
介護サービスの利用は、介護が必要となった方の心身の状態悪化を防ぐほか、生活の充実度をあげたり、家族の負担を軽減できたりしますので、積極的に利用を検討しましょう。

今回は、要介護1の状態と受けられるサービス、要介護1の方が一人暮らしを続ける方法について解説していきます。

要介護1の状態

要介護1は、5段階ある要介護のなかで、もっとも介護の必要性が低い状態です

具体的には、食事や排泄など身の回りのことはほとんど自分で行うことができますが、立ち上がりや歩行が不安定なため、負担の大きい家事や入浴などに一部介助(見守りや手助け)を必要とする場合があります。

また、理解力や判断力の低下や軽度認知症の症状が見られることもあります。

要介護1の認定基準

要介護1の認定基準は、要介護認定基準時間が「1日32分以上50分未満」であるとされています。

要介護認定等基準時間とは、1日のうちに介護を必要とする時間を算出したもので、要介護認定を行う際に介護の必要性を客観的に判断するための指標として用いられています。

要支援1〜要介護5の要介護認定等基準時間は以下のようになっています。

要介護度要介護認定等基準時間
要支援11日25分以上32分未満
要支援21日32分以上50分未満
要介護11日32分以上50分未満
要介護21日50分以上70分未満
要介護31日70分以上90分未満
要介護41日90分以上110分未満
要介護51日110分以上

 (参考:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」)

なお、要支援2と要介護1の要介護認定基準時間は同じですが、状態が全く同じというわけではありません。

認知症がある場合や主治医により「体調が悪化する可能性がある」と判断された場合は要介護1、状態の維持や改善が見込める場合は要支援2と判定されます。

要介護1で受けられる介護サービス

要介護1の方は、次の介護サービスを利用できます。

①自宅で生活しながら受けられる介護サービス

◼︎訪問型サービス
・訪問介護(ホームヘルプ)
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

◼︎通所型サービス
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護

◼︎宿泊型サービス
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護

◼︎複合型サービス
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護

◼︎生活環境を整えるサービス
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売

※要介護1の方がレンタルできる福祉用具は、歩行器、歩行補助杖、手すり、スロープの4品目に限られています。

②施設に入居して受けるサービス

・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院
・特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・地域密着型特定施設入居者生活介護

※特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上が対象となっています。

要介護1の区分支給限度額

介護保険で在宅サービスを利用する場合、所得に応じた1〜3割の自己負担で利用できる上限額が介護度別に定められています。このことを「区分支給限度額」と言います。
要介護1の1ヶ月当たりの区分支給限度額は、以下の通りです。

※1単位 = 10円の地域の場合

上記より、自己負担額1割の方は16,765円、2割は33,530円、3割は50,295円が介護保険で在宅サービスが利用できる上限額です。
なお、上限額を超えて利用したサービスは、全額自己負担(10割負担)になります。

要介護1でも一人暮らしを続けられる?

要介護1の認定を受けても、基本的に一人暮らしを続けることは可能です。

先ほど説明した通り、要介護1は、食事や排泄などはほとんど自分でできますが、負担の大きい家事や入浴などに部分的な介護が必要な状態です。

そのため、介護が必要な部分を周囲のサポートや介護サービスなどで補えば、一人暮らしは可能と考えて良いでしょう。

しかし、認知症の進行によって、自宅から外出したまま行方不明になるなどの生命の危険がある場合や内服薬や金銭の管理が不十分になった場合、他者とのトラブルが頻発する場合などは、一人暮らしの継続は難しいと言えます。

その場合は、要介護1から利用できる高齢者向け施設への入居を検討するなど、本人や家族の希望や状況に合わせて、最適な方法を選択しましょう。