この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。
Q:同居する父の要介護認定の更新をしたところ、要介護1から要支援2に下がってしまいました。
ケアマネジャーさんから「要介護から要支援になると、今まで使っていた介護サービスが使えなくなる」と聞き、困っています。
父の状態は、今までと変わらないので、介護度が低くなったことに納得できません。
要介護認定は、やり直すことができるのでしょうか?
A:お父様の状態が今までと変わらないのに、要介護認定の更新で介護度が下がってしまったのですね。
要介護認定の結果について、疑問がある場合は、まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に相談しましょう。
今回の認定結果に至った理由を詳しく聞き、それでも納得できない場合は、要介護認定のやり直しが可能です。
今回は、要介護認定のやり直しをしたい場合の2つの方法と、要介護認定が低く判定されてしまう原因についてご紹介します。
1.要介護認定をやり直す2つの方法
要介護認定をやり直すには「審査請求(不服申し立て)」と「区分変更」の2つの方法があります。
1-1.審査請求(不服申し立て)
「審査請求」とは、各都道府県に設置された介護保険審査会に対して、不服申し立てを行うことです。審査請求は、原則として認定結果を受け取った(処分があった)日の翌日から3ヶ月以内に、書面または口頭で行う必要があります。
不服申し立てを行うと、要介護認定の結果の妥当性について審査が行われます。そして、審査の結果、申し立てが認められれば、要介護認定のやり直しが可能となります。
しかし、審査請求では、やり直しの判定が出るまで数ヶ月かかることも珍しくありません。
時間と労力がかかり申請者の負担も大きいことから、筆者としては、要介護認定をやり直すには、もうひとつの方法である「区分変更」を検討することをおすすめします。
1-2.区分変更
要介護認定の結果に納得いかなかった場合、区分変更の申請を行うと、再度認定調査を受けることが可能です。区分変更はいつでも行うことができ、再調査の結果も1ヶ月程度で通知されます。
区分変更は、本来であれば、怪我や病気の進行などで本人の心身の状況が変化した時に行う手続きですが、要介護認定の結果に納得がいかないときでも申請することができます。
ただし、再度認定調査を受けても希望通りの認定結果になる保証はなく、場合によっては、さらに低い認定が出ることもあります。
一方、要介護度が上がると、利用できる介護保険サービスの量や種類は増えますが、利用料が上がり、自己負担が増える介護サービスもありますので、ご注意ください。
これらを踏まえて介護サービスを利用中の方は、要介護認定のやり直しをするか否か、ケアマネジャーとよく相談することをおすすめします。
2.家族の認識と異なる判定結果が出るのはなぜ?
要介護認定の結果が家族の認識と異なる判定となってしまうのは、主に2つの原因があります。
1つ目の原因は、主に訪問調査(認定調査)で普段の状態が調査員に伝わらなかったことにあります。
訪問調査では、本人が見栄を張って普段できないことを「できる」と言ってしまったり、緊張や不安からいつもよりも元気に振る舞ったりしてしまうことがあります。
そのため、訪問調査には本人の様子をよく知る家族が必ず立ち会い、日常の様子を詳細に伝えることが重要です。
家族が立ち会うことで、本人が答える内容と家族の認識にズレがあった場合にも、正しい状況を補足して調査員に伝えることができます。
▶︎訪問調査の受け方については、こちらをご覧ください→訪問調査とは?どんなことを聞かれるの?
もうひとつの原因は、医師が記入する「主治医の意見書(※1)」に、本人の情報が正しく記載されていなかったことがあげられます。
※1:主治医意見書とは、主治医が申請者本人の病気や症状などについて、医学的観点に基づいた意見を記載する書類のこと
正確な意見書を書いてもらうには、「主治医の意見書」の作成を依頼する医師に、本人の病気や認知症の状態など詳しい情報を伝えるようにしましょう。
なお、「主治医の意見書」の作成を依頼する医師は、本人の心身状況を把握する「かかりつけ医」が理想です。
かかりつけ医がいない場合は、過去に受診歴のある医療機関に依頼するか、市区町村の窓口に相談すると良いでしょう。
主治医の意見書は、要介護認定の更新ごとに必要となるので、かかりつけ医を決めておくと安心です。