上大岡トメさんの連載エッセイ「こうして遠距離介護は始まった」その7です。
前回は、お母様の高齢者施設を見学したときの様子が描かれました。(前回のお話)
今回は、その続きとして、複数の施設を見学する中で見えてきた「決め手」について綴られています。




コーディネーターさんにこちらの要望と優先順位を伝え(詳細は次回)、候補をいくつか絞ってもらいその中で見学したのは5カ所。このくらいの件数を回ると、大体施設のどこを見ればいいのかわかってきて、改めて自分の優先順位の確認もできます。
京都のアネには、見学の様子などをその都度伝えました。
彼女が特に重要視したのが、「重要事項説明書」。
何それ?
平たくいうと、施設のパンフレットに載り切らない細かい情報です。
事業、住宅(住む所なので)の概要、サービスの詳細と金額、介護士の状況などが数字と小さい字でズラーっと書かれたもの。
介護施設に関わらず、何かを契約するときに字がみっちり書かれていて、読むふりをしてすっ飛ばす(私だけか?)アレです。
施設によるけど、見学時にパンフレットと一緒にくれるところもある。お願いすればコピーをくれるところもある。でも見学にも行っていないアネが、なぜ見学した施設の重要事項説明書を読むことができたのか?
それは、その施設がある自治体のウェブサイトに載っているからです。
我々の場合は、横浜市のウェブサイト。
ひえー!なんでそんなことを知っているアネ!研究者とはいえ、私と見るところが全然違う(私はざっくりと施設の雰囲気を見る)。
アネが言うには、重要事項説明書の中で特に気になるのは、「介護士の離職率」と「入居者が退去したあとの行き先」。介護士の離職率が高いところは、現場に何か問題があることが考えられる。
また退去者の行き先は他の施設、病院、自宅、死去があるけど、他の施設が多かったらこれも現場に問題あり!と。
いやいや、この人がアネでよかった!
目からウロコをポロポロ落としながら重要事項説明書を読み、最後に絞った施設は2カ所。アネに京都から横浜に来てもらって、実際に見てもらう。
そして決めたのは、一番はじめに見学したところ。
もちろん私たちの4つの要望を満たしている。
決定打となったのは、母が以前病院でお茶を飲みながら、ポロッとこぼした「ホテルみたいなホームは絶対いや」というコトバ。決めたところは案内してくれた施設長が「うちは新しい建物ではありませんが、アットホームな施設です」と。
確かに施設は若干年季は入っていたけど、とても清潔で暖かい雰囲気でした。
あ、そうそう。飲酒ができる、という点も大きな決め手です。父は晩酌を楽しんでいたので、その楽しみは奪いたくなかった。
実際、入居後は毎晩ごはんの後、介護士さんが部屋まで焼酎を小さなコップに入れて持ってきてくれました。父は自分で、スナックなどのおつまみを用意していた。
親のちょっとしたコトバや習慣が、施設を決める時に大きな手がかりになります。
さらに詳しくはぜひ、拙著「マンガで解決 老人ホームは親不幸?」を読んでくださいね。






