上大岡トメさんの連載エッセイ「こうして遠距離介護は始まった」最終回です。
前回は、ご両親が高齢者施設に入居したあと、少しずつ新しい生活に慣れていく様子が描かれました。(前回のお話)
そして今回、トメさんの遠距離介護はひとつの区切りを迎えます。
ご両親を見送ったあとに感じたこと、そして介護を終えたあとに向き合う「その後」の時間についてのお話です。




両親がホームに入って、1ヶ月は会いに行かないようにしました。
最初は大変でも、とにかく慣れることに集中してもらう。不用意に顔を見せると、家への郷愁を助長させてしまうかもしれない。保育園の慣らし保育と一緒です。
と言いながらも心配なので、ホームのケアマネさんとは頻繁に電話で連絡を取り合い、両親の様子を聞いていました。
1ヶ月ちょっとして、ホームに入居後初めて会いに行きました。2人は私の顔を見るなり「こんなはずじゃなかった!」といろんな文句を私に叩きつけます。
私は全く動じず。なぜならそうなるだろうと、予想通りだったから。そして親のサンドバッグになろうと決めてきました。
2人とも言うだけ言ったら気が済んだのか、今度はホームの気に入った点を言い始めました。「お風呂がキモチいい」「用意しなくても食事が出てくる」など。自分を納得させようとしたのかもしれません。
3ヶ月過ぎると、父は他の入居者と一緒に混ざってカラオケを始めました。ここに住むなら楽しもう、と腹を決めたようでした。でもその矢先、時病の肺炎で入院。そのまま亡くなりました。施設に入居して4ヶ月。予想外の展開でした。
自宅にいる時は母のために動かないカラダを無理して、相当頑張っていた父。ホームに入って、ホッとしちゃったのかな。
その後残された母は、入院、手術をしつつも、ホームに戻り穏やかに暮らす。そして1年半後に父の元に旅立ちました。
今、私が絶賛していることは、両親の思い出のアップデート。
2人とも介護が始まってから最期をむかえるまでは、ヨロヨロ、ヨレヨレだった。その印象はかなり強烈に私の頭に焼きついています。
でもいつまでもその姿を思い出すのは、2人にとって本意ではないはず。
だから2人が元気だった頃の姿を、介護の頃の姿に上書きする。私のコドモたちが小さかった頃から社会人になるまでだから、60代から70代くらいかな。
コドモたちが小学生の頃は、実家に行くと父が車であちこち連れて行ってくれたり、母は得意な料理を振る舞ってくれたり。私もコドモたちを横浜の両親に預けて東京で仕事ができるので、とても助かっていました。
遺影も元気な頃の写真にすればいいと思う。
父の時は急いでいたので、そんなことを考える余裕もなく、ホームでイベントの時に撮ってもらった写真を使用。ヨレヨレのおじいちゃん!という感じ。
母は以前から希望を聞いていたので、70代後半の写真にしました。髪も染めて黒く、化粧もバッチリ。まゆもキリッとしている。あの頃はいくつかの趣味に精力的に向き合ってた。
そんなことを思い出しながら、最期の両親の印象を変えていくのです。
さて介護の話をずっと続けてきましたが、両親を見送ったのでここでいったん終わりにします。まさに介護真っ最中の方、介護未満の方も、日々お疲れさまです。
介護はいつかは予想できないけど、必ず終わりがあります。絶対1人で背負わず、まわりに助けを求めてください。介護は、情報、人脈、お金で乗り切りましょう。
▫︎編集部より
遠距離介護という形で、ご両親と向き合ってきたトメさんの連載。
親を見送ったあとに感じること、思い出との向き合い方など、
多くの方にとって考えるきっかけになるお話でした。
介護の形は人それぞれですが、
この連載が、今まさに介護と向き合っている方、
これから向き合うかもしれない方の小さなヒントになればうれしいです。
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