



「一度、状況を見にいらしてください」
いつもキッパリとした口調のケアマネのNさんが、電話口の向こうでさらにキッパリと言う。尋常じゃない雰囲気が伝わってきます。
慌てて横浜の実家にかけつけると、そこにはベッドに横たわったままの母が。
目はいつにも増してうつろ。私のこともわかっているような、わかってないような。
それまでは母は伝い歩きながらも自分で移動し、食事はちゃんとダイニングルームで食べていました。
でも今はベッドで上体を起こすのも介助が必要。トイレも自力は難しい。認知力も急激に落ちていて、会話にならない。
先月会った母とは別人です。
昨日まで元気でも、今日、突然重病人になる確率が高いのが高齢者。
どこかで聞いたこのコトバを思い出しながら、深くうなづく。
このまま、「寝たきり」になるんだろうか。
高齢の両親が介護を受けながら住む実家に、私が山口から行くのは月一回。
その頻度で今までは、訪問介護、看護、医療のみなさんの力を借りて、薄氷を踏みながらもなんとかなっていた。でも一気に状況が変わってきました。
「平日は毎日ヘルパーが朝晩、1日に2回来るようにしましょう!とにかく、様子を見にくる回数を増やさなくては」
とケアマネさんの力強いおコトバ。
でもヘルパーさん、訪問看護に来てもらえるのは、原則平日だけです。
今まで土日は父母2人でなんとかやっていたけど、この状況ではどう考えてもムリ!
ということで、週末は京都のアネとシフトを組んで、実家に来ることにしました。
母の発熱の原因は、どうやら母が患っている「骨盤臓器脱(骨盤底筋の衰えにより内臓が膣口より体外に出ること)」にあるらしい。母の場合は、子宮、膀胱の一部が膣口から出ていた。
それが炎症を引き起こし、発熱しているではないか、というのが主治医の先生の見解。
先生の紹介で総合病院の泌尿器科を紹介しいてもらい、さらにこの病気に実績のある違う病院で診察。手術を勧められました。
決して難しい手術ではないと担当の先生は言うけど、なんせ母、84歳。
全身麻酔だし、もう寝たきり状態だけど、入院してもっと寝ていたら正真正銘の寝たきりになるんじゃないかと。
でも放っておいても、結局寝たきりに!?頭の中はぐるぐる。
でも何もせずこのままベッドの上で弱って、最期を迎えるのはイヤだよね。
アネと私の意見は一致しました。
せめて自分でトイレできるくらいに回復したい!てか、して欲しい!本人もそう思っているよ、きっと!
ということで、一か八かで手術を受けることにしました。
コロナ禍で付き添うことも面会することもままならず。でも手術当日は緊急事態に備えて横浜で待機です。
手術終了予定時間から間もなく、担当医から電話がかかってきました。スマホを思わず握りしめる。
結果は無事成功!
はあ、よかった。父に早く伝えなくては。
・上大岡トメさんの書籍発売のお知らせ
上大岡トメさん著書、
新刊「マンガで解決 老人ホームは親不孝?」 主婦の友社
が発売されました!
親を老人ホームに入れることは“親不孝”なの?
介護する家族にとっても、親自身にとっても本当に幸せな選択とは?
そんな迷いや葛藤に寄り添いながら、解決へのヒントを与えてくれる一冊です。
トメさんが実際に直面したご両親の介護体験や、同世代の方のリアルな本音をもとに
専門家の先生や介護の現場に関わる方の知見も交えて、
リアルでわかりやすい形で描かれています。
「介護はまだ先」と思っている方も、
すでに介護に直面している方も、
親との暮らしをどうしていくか考えるきっかけになる本だと思います。

「マンガで解決 老人ホームは親不孝?」
著書 / 上大岡トメ
監修 / 畠中雅子
発行 / 主婦の友社
👉 Amazonページはこちら
マンガで解決 老人ホームは親不孝?(Amazon)