介護のきほん vol.11
要介護3とはどのような状態?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。


Q:要介護3になると特別養護老人ホームの入所申し込みができると聞きました。
要介護3とは、どのような状態なのでしょうか。また、要介護3で利用できる介護サービスや在宅介護で、家族が気をつけることを教えてください。

A:要介護3は、7段階に分かれている要介護度のうち、介護状態が重い方から3番目に位置する区分です。
日常生活面において全面的な介護が必要となる状態であり、介護をする家族が精神的・肉体的な負担が増してくる時期でもあります。

今回は、要介護3の状態や受けられるサービス、家族が在宅介護をする場合の留意点についてお話します。

1.要介護3の状態

要介護3は、食事や排泄、入浴など日常生活のほとんどに全面的な介助が必要な状態です。
自力での立ち上がりや歩行が困難なため、移動には車椅子や歩行器が必要になります。

また、身体的な衰えに加え、理解力や記憶力の低下もみられます。認知症による徘徊や妄想、大声を出すことなどが原因で日常生活に支障をきたすケースもあります。

寝たきりではないものの、日常生活のほとんどの場面で介助が必要な状態のため、家族にかかる負担は大きくなります。
そのため、要介護3になると、在宅介護を続けることに限界を感じ、施設での介護に切り替えるケースも少なくありません。

2.要介護3の認定の基準

要介護認定の基準には、厚生労働省が定めている「要介護認定基準時間」が使われています。
要介護認定等基準時間とは「その人にかかる介護の手間」を時間に換算して評価したものです。
それによると、要介護3では「1日70分以上90分未満」となります。

要支援1〜要介護5の要介護認定等基準時間は、以下のようになっています。

要介護度要介護認定等基準時間
要支援11日25分以上32分未満
要支援21日32分以上50分未満
要介護11日32分以上50分未満
要介護21日50分以上70分未満
要介護31日70分以上90分未満
要介護41日90分以上110分未満
要介護51日110分以上

(参考:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

3.要介護3で受けられるサービス

次に、要介護3の方が利用できる介護サービスを紹介します。

在宅介護で受けられるサービスの種類

要介護3では、介護度を条件としたサービスの利用制限はありません。
以下は、要介護3の方が在宅介護で利用できるサービスの種類です。

【自宅で受けられるサービス】
・訪問介護(ホームヘルパー)
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・住宅改修

【施設に通うサービス】
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
・地域密着型デイサービス
・療養デイサービス
・認知症デイサービス

【施設に宿泊するサービス】
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

【通い・訪問・宿泊がセットになっているサービス】
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護

入所できる施設の種類

要介護3の方が入所できる施設の種類は、以下の通りです。

【介護保険施設】
・特別養護老人ホーム(特養)
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院

【特定施設入居者生活介護】
・介護付き有料老人ホーム
・住宅型有料老人ホーム
・サービス付き高齢者向け住宅
・軽費老人ホーム(ケアハウス)

【地域密着型】
・認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
・地域密着型特別養護老人ホーム

要介護3になると「特別養護老人ホーム」への入所が可能です。

しかし、特養への入所は申し込み順ではなく、要介護3よりも重度である要介護4・5の方や緊急性の高い方が優先されます。

そのため、緊急性が低いと判断される要介護3の方は、申し込みをしてもすぐに入所できないのが現状です。
また、2022年4月時点で、要介護3以上の待機者数は25.3万人にも上ります。

このような状況から、特養入所の順番が来るまでの間、有料老人ホームや介護老人保健施設(老健)などに一時的に入所する人も少なくありません。

なお、施設への入居を検討する際には、担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。
ケアマネジャーは、地域の介護施設の情報を持っているため、入居を希望する方の心身の状態に合った施設を紹介してくれます。
参考記事:介護保険で受けられるサービスの種類は?

4.要介護3の在宅介護で留意すること

前述の通り、要介護3は、日常生活に全面的な介護が必要で、昼夜を問わずさまざまな場面でのサポートが必要となります。そのため、介護を担う家族の負担は非常に大きいと言えるでしょう。

厚生労働省の調査でも、要介護3以上になると、1日の介護時間が「半日以上」「ほぼ終日」と回答する人が過半数以上を占めています。

介護の負担が大きくなると、ストレスや介護疲れが蓄積し、介護者と介護を受ける本人が共倒れする可能性が高まります。そのため、介護の負担軽減を図ることが不可欠となります。

介護の負担を軽減するには、介護を家族だけで抱え込まず、適切なサービスを最大限に活用することが重要です。
たとえば、ショートステイなどのサービスを利用すると、介護者がまとまった休息を取ることができます。

介護の不安や心配ごとがある場合は、担当のケアマネジャーに相談し、本人や家族の状況や希望に合った介護サービスを調整してもらいましょう。

さらに、働きながら介護をするという方は、介護休業などの制度も確認しておきましょう。
また、状況に合わせて施設を利用するという選択肢を持っておくことも重要です。
余裕がある段階から、施設探しを始めておくと安心ですね。