介護のきほん vol.13
要介護認定の結果が出る前にサービスは利用できますか?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。

Q:84歳の母は、3ヶ月前に脳梗塞で倒れ、後遺症が残っています。
病院での治療を終えたものの、日常生活に介護が必要になったため、区役所で要介護認定の申請を行いました。しかし、結果が出るまでに1ヶ月程度かかると言われました。
認定の結果が出るまでは介護保険サービスは利用できないのでしょうか?その間に母の状態が悪化してしまうことが心配です。
認定結果を待たずにサービスを利用する方法はありますか?


A:要介護認定の効力は申請日から発生しますので、申請時点から介護保険サービスは受けられます。
認定結果が出るまでの間は、暫定的なケアプランを作成してもらい、暫定的な被保険者証(介護保険資格者証)を提示してサービスを利用することになります。

今回は、認定前に介護保険サービスを利用する方法についてご紹介します。

1.暫定ケアプランによりサービスが利用可能

要介護認定の結果が出る前に介護保険サービスを利用するには「暫定ケアプラン」が必要です。

暫定ケアプランとは、利用者の介護度を予測して作成される「仮のケアプラン」のこと暫定ケアプランにより、認定前に介護保険サービスを利用できる仕組みを整えます。

また、認定結果が通知されるまでの間は、暫定的な被保険者証(介護保険資格者証)をサービス事業者へ提示してサービスを利用することになります。

2.暫定ケアプランの注意点

暫定ケアプランで介護保険サービスを利用する際には、注意点があります。
認定結果が予測した介護度よりも低い場合や、非該当(自立)となる場合があるからです。

介護度が低く出てしまい、介護保険の「支給限度額」を超えてサービスを使ってしまった分は、実費負担(10割負担)となってしまうため注意が必要です。

たとえば、
要介護1の区分支給限度額は1か月16万7,650円で、要介護2の区分支給額は19万7,050円です。
要介護2で暫定ケアプランを作成し、認定された介護度が要介護1だった場合は、差額の29,400円が実費負担になってしまいます。

そのため、正確な認定が通知されるまでは、利用するサービスを必要最低限にとどめておくことをおすすめします。

区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額)

要介護状態区分支給限度額利用者負担限度額
(1割)
利用者負担限度額
(2割)
利用者負担限度額
(3割)
要支援150,320円5,032円10,064円15,096円
要支援2105,310円10,531円21,062円31,593円
要介護1167,650円16,765円33,530円50,295円
要介護2197,050円19,705円39,410円59,115円
要介護3270,480円27,048円54,096円81,144円
要介護4309,380円30,938円61,876円92,814円
要介護5362,170円36,217円72,434円108,651円

3.暫定ケアプラン作成の相談先

認定結果を待たず、1日でも早く介護保険サービスを利用したい場合は、要介護認定を申請する際に、担当窓口へ相談してください。
「認定結果が出るまでの間、サービスを利用したい」旨を伝えると、暫定ケアプランを作成する事業所を紹介してもらえます。

暫定ケアプランは、認定結果が「要支援」と見込まれる場合は地域包括支援センターのスタッフ、「要介護」と見込まれる場合は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成します。

4.暫定ケアプラン作成〜サービス利用開始までの流れ

暫定ケアプラン作成からサービス利用開始までの流れは通常のケアプラン作成と同様です。

◾️暫定ケアプラン作成の流れ(要介護と見込まれる場合)
①ケアマネジャーと面談
②ケアマネジャーが暫定ケアプラン原案を作成する
③ケアマネジャーがサービス担当者会議を開催
④利用者・家族へケアプランの説明・同意
⑤暫定ケアプランの交付・サービス事業者と契約
⑥介護保険サービスの利用開始

5.まとめ

介護保険サービスは、市区町村に要介護認定を申請した時点から利用可能です。
認定結果が出るまでの間は、暫定的なケアプランを作成してもらい「介護保険資格者証」を提示してサービスを受けることになります。

なお、認定結果によってはサービスの一部が実費負担になる可能性があるため、正確な認定結果が出るまでは、利用するサービスを必要最低限にとどめておくことをおすすめします。

認定結果を待たずに、1日でも早くサービスを利用したいという方は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口へご相談ください。