介護のきほん vol.19
要支援1とはどのような状態?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。

Q:最近、一人暮らしの母(78歳)が要支援1と認定されました。
要支援1というと、どの程度の介護が必要な状態でしょうか?
また、要支援1ではどのような介護サービスが利用できるのでしょうか?施設への入居は可能ですか?

A:要支援1は、日常生活の基本動作はほぼ自立していますが、入浴や買い物などに見守りや一部介助が必要な状態です。7段階の要介護認定のなかで最も軽い区分になります。

今回は、要支援1の状態と受けられる介護サービスの種類、入居できる施設をご紹介します。

1.要支援1の状態とは

要支援1は、食事や排せつといった日常的な生活動作は自立しているものの、入浴や買い物、掃除などの際に見守りや部分的な支援が必要となる状態です。

要介護度は、認定調査の結果で算出される「介護にかかる1日の手間(所要時間)」によって決まります。
このことを「要介護認定等基準時間」と呼び、要支援1は「25分以上32分未満、またはこれに相当する状態」とされています。

・要支援2との違い

要支援2の要介護認定等基準時間は「32分以上50分未満、またはこれに相当する状態」です。
要支援2も基本的な日常生活動作は自立していますが、立ち座りや歩行の際に支援を必要とするなど、要支援1と比べると、介助が必要な範囲が広くなります。

要支援の状態について

2.要支援1が受けられるサービス

要支援1の方は「介護予防サービス」が利用できます。
このサービスは、心身の状態を今以上に悪化させないこと、なるべく自立できる方向へ促すことを目的としています。

介護予防サービスには、介護保険を利用して全国共通で受けられるものと、市区町村によって内容や料金が異なる「総合事業」のサービスがあります。自治体ごとに利用できるサービスが異なる場合があるため、お住まいの市区町村に確認する必要があります。

要支援1の方が利用できる介護予防サービスは、次の通りです。

■訪問型サービス
・介護予防訪問介護(ホームヘルプ)
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防訪問看護
・介護予防訪問リハビリテーション
・介護予防居宅療養管理指導

■通所型サービス
・介護予防通所介護(デイサービス)
・介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
・介護予防認知症対応型通所介護

■宿泊型サービス
・介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

■複合型サービス
・介護予防小規模多機能型居宅介護

■生活環境を整えるサービス
・介護予防福祉用具貸与(レンタル)
・特定介護予防福祉用具販売(購入)
・介護予防住宅改修

※要支援1の方がレンタルできる福祉用具は、歩行器、歩行補助杖、手すり、スロープの4品目に限られます。
対象外となっているものでも、市区町村や医師の所見により、例外的にレンタル可能となる場合があります。

なお、2024年4月からレンタルできる福祉用具の一部について、購入も選択できるようになりました。

・要支援1の支給限度額

介護保険でサービスを利用する場合、介護度別に支給限度額が決められており、限度額内であれば、所得に応じた1〜3割の自己負担でサービスを利用できます。

要支援1の1ヶ月当たりの区分支給限度額は、以下の通りです。

要支援1の区分支給限度基準額

区分支給限度基準額自己負担1割自己負担2割自己負担3割
5万320円(5032単位)5,032円1万64円1万5,096円

※1単位10円の場合。地域区分単価によって限度額は異なります。参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」

要支援1では、自己負担額1割の方は5,032円、2割は1万64円、3割は1万5,096円が介護保険でサービスが利用できる上限額です。
この上限額を超えて利用したサービスは、全額自己負担(10割負担)になるため、注意しましょう。

3.要支援1の方が入居できる施設

軽度な状態である要支援1では、部分的なサポートを受ければ、自立した生活が可能です。しかし、日常生活に不安のある場合は、次の施設に入居できます。

◾️サービス付き高齢者向け住宅(民間施設)
高齢者向けの賃貸住宅。安否確認や食事の提供などのサービスが受けられます。自由に外出や外泊ができるなど生活の自由度が高いのが特徴です。

◾️住宅型有料老人ホーム(民間施設)
食事の提供や生活支援などのサービスが付いた老人ホーム。
介護が必要となった場合、入居者が地域の介護サービス事業者を自分で選んで利用しながら、施設での生活を継続します。

◾️介護付き有料老人ホーム(混合型)(民間施設)
介護などのサービスが付いた老人ホーム。介護が必要となっても、施設が提供する介護サービスを利用しながら施設での生活を継続できます。

◾️ケアハウス(公的施設)
所得の低い一人暮らしの高齢者を対象とした福祉施設。自宅での生活が困難な人が、生活支援サービスを受けながら生活できます。

◾️養護老人ホーム(公的施設)
環境上・経済的な事情から居宅でサービスを受けられない高齢者を対象とした福祉施設。入所の判断は行政が行います。

要支援1が入居できる施設

4.まとめ

要支援1は、要介護認定の中で最も軽度の状態です。
部分的な支援があれば日常生活や家事を自立して行うことができます。

受けられるサービスには、在宅で介護予防サービスが受けられる「介護予防訪問介護」や日帰りで施設に通う「介護予防通所介護」などがあります。

自宅での生活に不安がある場合は、要支援1の方でも利用できる施設への入居を検討してみるのもよいでしょう。 要支援1の方が、介護予防サービスや入所施設の利用を希望する場合は、お住まいの地区の地域包括支援センターに相談してください。