介護のきほん vol.5
要支援と要介護は何が違うの?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。


今回は、一人暮らしの父親を心配する恵美子さん(48歳)からのご相談です。

Q:もうすぐ80歳になる一人暮らしの父がいます。近頃は腰や膝が痛むようで、買い物や掃除、食事の準備などの家事が一人では難しくなってきました。
そこで、これから要介護認定を受けてホームヘルパーの利用を検討しています。

要介護認定には、「要介護」と「要支援」の2つの区分がありますが、具体的な違いがわかりません。また、要介護と要支援では、受けられるサービスに違いがあるのでしょうか?

A:要支援・要介護とは、日常生活を送るなかで、その人がどの程度の介護を必要とするのかをあらわす指標です。
要介護認定を受けると、介護の必要性の低い順に要支援1・2、要介護1〜5までの7区分と非該当(自立)の合計8段階に分けられます。

このうち、介護保険のサービスを受けられるのは要支援1・2と要介護1〜5です。

また、認定された要介護度の区分によって受けられる介護サービスの種類や介護保険が適用される費用の上限(区分支給限度額)に違いがあります。

今回は、要支援と要介護の状態と受けられるサービスの違い、介護度別の区分支給限度額について見ていきましょう。

1.要支援・要介護の違い

まず、要支援と要介護の状態の違いを確認しましょう。
◾️要支援とは
日常生活の大半を自立しているものの、買い物や掃除など日常生活の一部に援助が必要で、将来、要介護になる恐れがある状態のこと。
例えば、入浴は一人でできるけれど、浴槽の掃除が難しいので生活支援が必要な状態です。

◾️要介護とは
要介護は入浴、排せつ、食事などの日常生活動作について常に介護を必要とする状態のこと。
例えば、一人では入浴ができないため、介護者による介助が必要な状態です。

2.要介護度別の身体状態の目安

次に、要介護度別の心身の状態を見ていきましょう。

区分心身の状態
要支援1要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態基本的な日常生活はほぼ自立しているが、入浴や掃除などに見守りや手助けが必要。
要支援2生活の一部に部分的な介護を必要とする状態要支援1よりも日常生活を行う能力が低下し何らかの手助けが必要。
要介護1生活の一部に部分的な介護を必要とする状態日常生活や立ち上がり、歩行に一部介助が必要。軽度の認知機能低下が見られる。
要介護2軽度の介護を必要とする状態立ち上がりや歩行に何らかの介助を必要とすることがある。入浴や排泄にも一部介助が必要。物忘れや理解力の低下が見られる
要介護3中等度の介護を必要とする状態立ち上がりや歩行には、杖や歩行器車椅子を使用する状態。入浴や衣類の着脱などに全面的な介助が必要。認知機能が低下し、見守りも必要
要介護4重度の介護を必要とする状態要介護3以上に日常生活に全面的な介助、食事に一部介助が必要。理解力や思考力にも著しい低下が見られる。
要介護5最重度の介護を必要とする状態日常生活全般にわたり、全面的な介助が必要。意思の伝達が難しく、介護なしでは日常生活が不可能。

3.要介護・要支援の認定基準

要介護認定は、厚生労働省が定めた「要介護認定基準時間」を基準に判定されます。
要介護認定等基準時間とは「介護にかかる手間」を時間に換算したものです。

以下は、要介護度ごとの「要介護認定基準時間」です。

要介護度要介護認定等基準時間
要支援11日25分以上32分未満
要支援21日32分以上50分未満
要介護11日32分以上50分未満
要介護21日50分以上70分未満
要介護31日70分以上90分未満
要介護41日90分以上110分未満
要介護51日110分以上
 
(参考:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

介護度が重くなるほど、介護にかかる手間(時間)も増えることがわかりますね。

4.要支援・要介護で受けられるサービスの違い

要支援と要介護では受けられるサービスに違いがあります。
要支援の方は「介護予防サービス」を受けることができます。(予防給付と言います)
介護予防サービスの目的は、要介護状態になることを予防し、状態が悪化しないように支援することです。

一方で、要介護の方は、日常生活に必要な「介護サービス(介護給付)」が受けられます。

なお、要介護認定で「非該当(自立)」と判定された方は、介護保険のサービスは利用できませんが、市区町村が行う「介護予防・日常生活支援総合事業(一般介護予防事業)」に参加することが可能です。

◾️要介護・要支援認定の区分と利用できるサービス

区分利用できるサービス
要支援1・介護予防サービス(予防給付)・介護予防・日常生活支援総合事業
要支援2
要介護1・介護サービス(介護給付)
要介護2
要介護3
要介護4
要介護5
非該当・市区町村が行う介護予防事業

5.要支援・要介護の区分支給限度額の違い

介護保険の在宅サービスを利用する場合は、それぞれの介護度に応じて介護保険から給付される上限額(区分支給限度額)が設定されています。
区分支給限度額内であれば、所得に応じた1〜3割の自己負担で介護サービスが利用できます。

以下の表は、1ヶ月あたりの区分支給限度額です。

区分区分支給限度額自己負担1割自己負担2割自己負担3割
要支援15万320円5,032円1万64円1万5,096円
要支援210万5,310円1万531円2万1,062円3万1,593円
要介護116万7,650円1万6,765円3万3,530円5万295円
要介護219万7,050円1万9,705円3万9,410円5万9,115円
要介護327万480円2万7,048円5万4,096円8万1,144円
要介護430万9,380円3万,938円6万1,876円9万2,814円
要介護536万2,170円3万6,217円7万2,434円10万8,651円

(1単位=10円として計算)
参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」

上記の通り、介護度が重くなるほど多くのサービスを必要とするため、区分支給限度額も高く設定されています。
注意点として、区分支給限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担することになります。

全額負担となると、かなり高額になりますので、介護サービスを利用する際は、区分支給限度額に気をつけてサービスを調整してくださいね。

6.まとめ

介護保険の要介護認定で決定される「要支援1から要介護5」の介護度は、その人が日常生活の中で、どの程度介護を必要とするのかをあらわす指標となるものです。
また、要介護認定の結果により、受けられるサービスの種類や介護保険の区分支給限度額が異なります。

これらは、介護保険でサービスを利用するうえで重要なポイントになりますので、しっかりと理解しておきましょう。