親の介護ってなんだろう?

~これから介護が始まるかもしれない方へ~

親の介護がまだ始まっていないからこその不安があると思います。今から知っておいたほうがいいことってなんだろう?離れて暮らしていてもどうにかなるだろうか?

親の介護についてそろそろ考えなければいけないと思っているみなさんと一緒に“親の介護ってなんだろう?”を考えていきましょう。

・親の介護はどんな風に始まるか

親の介護が始まる経緯はもちろん人によって異なります。親子関係も100組あれば100通りです。筆者の父の例をごく簡単にお話してみましょう。

父に忘れっぽさが現れ始めたのは77歳のときでした。次第に認知症の症状が明らかになり、これはもう受診したほうがいいという状態になったので専門医を探し始めました。ここから親の介護のようなものが始まったように思います。

専門医に認知症と診断されてから介護認定の申請を行い、介護サービスを検討していた時です。今度は脳梗塞を発症してしまったのです。失語症の後遺症が認知症に加わりました。早急に24時間の見守り態勢と介護の方法、生活環境を整える必要に迫られます。同時に、父に関することすべてを誰かが代わりに対応しなければならなくなったのです。医療と介護サービスの窓口になる他にも金融機関や各種支払い等の確認、父の人間関係の対応など、親の代行の役割を始めたとき、私は「親の介護が始まったな」と実感しました。

あとから考えれば、父に忘れっぽさが起こり始めていると気づいた時から高齢の母に負担がかからないように、見守りの態勢を検討して必要なサポートに着手しておけばよかったと思います。父は認知症の症状の影響から、早い段階にお金の使い方に関する認知度が下がり、金銭的なトラブルも抱えていたことを後になって知ったからです。

でも親の介護なんてなるべく考えたくないし、できれば先延ばしにしたいものです。親が弱っていることを受け入れたくないという気持ちもありました。「年をとってきたから当然だろう」とか、「何かあれば母が言ってくるだろう」などと考え、少しくらい気になることがあっても気づけない、いや、気づきたくなかったんですね。

だけど、親の介護と言ってもそもそも介護保険があるのに子どもが親の介護をしなくてはならないのでしょうか?

・介護保険制度があっても子どもが介護する背景とは

私たちは毎月、介護保険料を負担しています。介護保険は医療保険と同じく社会保険の一つで加入条件を満たす人全員に加入義務があります。65歳以上になり介護が必要になったら介護サービスという形で保険が支給されるしくみです。(病名により40歳以上で対象になる場合もあり)

日本では、介護保険制度ができる以前の介護は主に家族が行っていました。でも戦後になって長生きする人が増えて核家族化が進み、家庭内に介護の担い手がなくなっていきました。そこで、介護離職の増加を防ぐためにも「介護は家族に任せるのではなく、社会全体で担うもの」という考えのもとに2000年、介護保険制度がスタートしたのです。国民全体で支え合う社会保険制度によって“誰もが平等にプロの介護を受けられる安心感”を得ることができたのです。

しかし、介護保険が提供できるサービスの内容や利用量には厳密な制限があります。高齢者の暮らしには手助けを必要とする場面が人それぞれさまざまあることから介護職のプロの人たちに親の介護を任せ切るには難しさがあります。結局、家族が何らかの形で介護に関わらざるを得ないことが多いのが現状なのです。

・介護に関する最初の準備は、“心の準備”と見守りコミュニケーション

プロの介護は介護が必要になってから始まります。でも家族の介護は介護が必要になる前から親の生活に何らかの支障が起こりそうだと気づいた段階から始まっていると捉えても決して早すぎることはありません。ぎりぎりになってから、切羽詰まってから一気に対策を講じようとすると、親子の見解や希望が異なることも多くなり、その結果、親子間で争いごとが起こったり、物事がスムーズに運ばなかったりしやすい例が見られるからです。

振り返ってみると、私は介護が始まってからよりも、父の衰えや認知症の兆しを感じながら一喜一憂している時期のほうが、実は不安は大きかったのです。想像を膨らませてしまい、最悪な事態を考えて、必要以上に悲しくなったり、恐怖心を持ったりしていました。友人から「何かあったの?」と心配されるほど表情が暗かったようで、きっと親の老いの現実を受け入れる心の準備がなされていなかったのでしょう。

多くの親は、元気なうちは子どもに干渉されたくないし、子どもに迷惑をかけたくないと思っているものです。親の面倒を検討するのはなるべく先にしたい子どもと、その点は意見が合うのですね。でも高齢になったら持病の有る無しに関わらず、老化現象によって身体的にも精神的にも少しずつ衰えていきます。そうなるとだんだん不安を覚え、何かあったときに頼りになる人は誰だろう?自分のことを見守ってくれる人はいるだろうか?と考え始めるのです。「子どもは忙しい。けれども頼りにできたらやはり心強い」と親は思っているかもしれません。

子どもの側も親に何か手助けが必要になったときに対応するというスタンスがとれるかどうか(とれない、とりたくないも含めて)を、今のうちから考えておいたほうがいいでしょう。そういう“心の準備”が親の介護の最初の準備です。そして親の衰えや変化に気づけるように、今から少しずつでも見守りコミュニケーションの仕方を工夫することをおススメします。