前回の記事「きょうだい間の意見の違い」を読んでくださった方々からメッセージが届きましたのでご紹介しつつ、
今回も引き続いて“介護におけるきょうだい間のお悩み”について考えていきたいと思います。
兄弟は他人の始まり?
状況認識の違いと、各々の介護に対する方針の違いが、これまでの兄弟関係と合わせて出てきます
きょうだいとはいえ、実家を離れれば連絡も滞りがちになるものですね。でも、親の介護問題が起こったら、どうしても連絡をとったり、話し合ったりしなければならないので気が揉めます。
別々の人生を歩んだきょうだいの価値観は固まっているので、介護についての認識や方針が当初は異なるのも当然かもしれません。だけど、親の介護を何とかしようという気持ちがきょうだいそれぞれあれば、話し合うことで違いの溝を埋められる可能性もあると思いたいです。
姉が遠方に嫁いだので、結局、丸投げされるんだろうなと思って気が重いです
介護が始まる前から悩んでしまう人が今の時代は多いと思います。
介護が始まったら、自分の今の生活はどうなってしまうんだろう?という不安、きょうだいと介護について話すのも気が重いという気持ち。
介護が始まってからよりも介護が始まる前のほうがいろいろと妄想してしまうから、精神的につらくなるんですね。
いざ話し合う前の準備として自分が介護にどれくらい関わるか、関われるかを、あらかじめ介護が始まる前に少しずつシミュレーションしておくといいかもしれません。
・きょうだいの配偶者と考え方に相違があると、実のきょうだいともギクシャクして難しい
・47歳の夫を末期がんで介護中。この状況なのに、夫の兄が他人事といった感じでなんだかもやもや
結婚したら、自分のきょうだいの配偶者や配偶者のきょうだいなどの親族が増えますね。
普段は付き合わなくてよくても、介護問題が起こったら話す機会が増え、トラブルが生まれやすくなります。義理のきょうだいと争いたくはないけど、無視もできない。非常に厄介です。
きょうだいに対しては「親への愛情はないの?」と情を求めるから腹立たしくなるのかもしれません。
「兄弟は他人の始まり」と言いますが、いっそのこと“課題を解決するために協力し合う他人(友だち)”くらいの相手と思って付き合うのも一考でしょうか。
きょうだい間で揉めやすい5つのこと
では、具体的にきょうだい間で揉めやすい事柄は何なのかを考えてみます。
1.親の介護を誰がするのか
親に介護が必要になったら誰かが介護をしなければなりませんから、最も揉めやすい事柄です。
プロの力を利用するにしても、家族にはさまざまな判断や何らかの協力が求められます。
「キーパーソン」や「主たる介護者」に誰がなるかを決めます。
2.在宅介護か、施設介護か
きょうだい間でも価値観の相違が現れやすい事柄です。
あくまでも親の状態や希望に沿って決めることですから、親との話し合いもなるべく早めにしたいものです。
3.自分だけが損をしているという不安や不満がある
独身だったり、実家の近くに住んでいたりすると、なんとなく介護を引き受けてしまうケースは多いものです。
なし崩し的にきょうだいの誰かに介護を任せたり、自分が介護を引き受けてもいいと思ったりしても、介護は長丁場になるかもしれませんので、必ず家族きょうだいで話し合って同意し合ってからにしましょう。
4.きょうだいの配偶者が直接口を出す、きょうだいが配偶者の言いなりになっている
昔は長男の妻が介護を担うことが多かったですが、現在は実子が介護を引き受けるのが一般的になりつつあります。核家族が多くなりました。
介護が必要になったときに、離れて住む息子の妻に介護されたいと願う親はほとんどいないように思います。
男女(息子か娘か)の差がなくなった分、きょうだいは公平となり、もめやすくなりました。それぞれの配偶者が口を出すことも増えてくるでしょう。平等になったからこそ話合いが必要です。
5.親のお金を誰が管理するのか
場合によっては最も争いやすい事柄です。親自身でお金を管理するのが難しくなってきたら誰かが代わりにしなければならなくなりますが、お金の問題は信頼関係の最重要課題です。
また、主たる介護者の負担を金銭的にどう捉えるかも重要な課題です。
将来の相続にまで響く問題なので、しっかり情報共有をするためにもやはり話し合いが大切です。
話し合いのポイント
きょうだいで意見が一致しても、それを親が拒否する場合がありますね。まずは親の要望をよく聞くことが肝心です。介護サービスも、外部のサービスも、「本人の同意」を重要視します。
親本人を外して物事を決めることは避けましょう。
ただし親の要望には到底添えられないこともあると思います。そんな場合は、親に優先順位をつけてもらい、その上できょうだい間で具体的なことを話し合えるよう努めましょう。
親を交えて話合いをする際は、注意点があります。
高齢になった親は、しっかりものを言っているようでも、以前に比べたら理解力や判断力は低下しているものです。そのせいで、感情的になったり、必死に抵抗したりします。
そんなときは、「会話を親のペースに合わせ、親の答えをじっくり待つ」ことも大事です。そんな余裕はないよ!と言われるかもしれませんが、子どもたちのペースに合わせてものを考えることは、高齢の親にとってけっこう難しいものです。
「急がば回れ」が案外うまくいきます。「私たちだって忙しいんだから!」とつい言ってしまいがちですが、これはやっぱり禁句です。
話し合う内容としては、まず介護のキーパーソンを決めましょう。
キーパーソンとは、介護や医療の専門職の人たち、行政、地域で支援してくれる人たちの窓口になる人です。いわゆる介護のハブ役。親、親族、外部の情報が集まる存在です。
キーパーソン自身が「主たる介護者」になるケースも多いですが、きょうだいで役割分担して、負担を軽減するのもよいと思います。
親の状態は変化していきますので、そのたびに検討することが新たに出てきます。
前回の記事にも書きましたが、親の介護は、看取り、相続、実家の整理にまでつながっています。
介護中もきょうだいで情報を共有し合うことが大切です。
そしてしつこく言いますが、介護は家族だけで抱えず、最初からプロと一緒に行うことを忘れずに!
介護は子どもからの通信簿?
介護者には日々、悩みや不満が募っていきます。それをきょうだいに理解してほしいと思う人も少なくありません。
理解あるきょうだいがいるからこそ、うまくやっているという方からのコメントがありました。ご紹介します。
母の世話をしている私に対して、遠方に住む姉が気遣ってくれます。
報告・相談ができて愚痴も聞いてくれます。時折、様子を見にも来てくれます。お金を置いてくれることもあります。
心強い味方がいるという安心感があって、介護が始まってからのほうが姉妹で連絡を取り合い、話ができるようになりました
介護を担っていないきょうだいの気遣いひとつで、介護しているきょうだいの気持ちは大きく変わるものです。
これは多くの介護者が願っていることだと思います。
例えば、遠方に住んでいて直接手助けできないきょうだいも、テレビ電話を使って親と一緒に夕食をとるなど何か出来ることを見つけてくれると嬉しいものです。
こんなメッセージも届いています。
私は母親になり母の気持ちが、弟は父親になり父の気持ちがわかる。
姉弟でやっと介護が成り立つ
自分が親になったことで親の気持ちがわかったのですね。きょうだいが共に同じ思いになったなんて、きっといい親御さんなのでしょう。
「老後は子育ての通信簿」という言葉がありますが、言い換えれば“介護は子どもからの通信簿”なのかもしれません。
介護が近づいてきた親も、子どもたちからどんな通信簿をつけられるのかと、実はドキドキしているのかもしれませんね。