実家を全て片付けることは不可能、と悟った前回。
優先順位をつけて片付けることにしました。今回はどこを片付けようか。
母はいつの頃からか、
「あのキャビネットには貴金属や貴重品やら思い出のものが入っているから、お姉さんといつか中をちゃんと見てね」
と繰り返し言うようになっていました。その当時から彼女には、すでに自分で片付ける気力はなかったらしい。
そのコトバを受けて、以前キャビネットの扉を開いたことがある。
中には無数の箱と紙袋がぎゅっと詰まっていた。箱を一つ抜いたら、雪崩が起きそう。そのまま静かに扉を閉めて、見なかったことにした。
あれから数年。
そうだ!
あのキャビネットを片付けよう。何はともあれ貴重品と思い出の品を確保だ。こればっかりは、失ったら取り戻せない。
どんな貴重品が出てくるかわからないので、アネにも来てもらって一緒にキャビネットの中身を棚卸しすることにしました。
以前、私は両親の寝室の床の間にうず高くたまった本やモノを片付けた時、全身痒くなったので、手袋、防塵マスク、頭にはタオルを巻く。アネも手袋を装着。
手順は以下の通り。
1.キャビネットの中身を、いったん全部出す(下にシートを敷いておくとよい)。
2. 箱や袋の中身を一通りチェック。「このまま保管するもの」、「処分するもの」、「判断しかねるもの」、に分け る。現金、貴重品類は別の場所で保管するので、確保。箱で保管するものは、見える場所に必ず品名を書く←これ大事!あとで忘れるのは目に見えているので、2度手間を省くため。
3. 「このまま保管するもの」「判断しかねるもの」をキャビネットに戻す。
実はこの棚卸しを行った時、母はすでに施設に入居していました。でも以前母には聞き取り調査をしており、キャビネットの主要な中身、また残しておいて欲しいものはなんとなく把握していた。その筆頭は、父とやりとりをした手紙だ。結婚する前のことらしい。
アネとキャビネットのものを出しつつ、一つの箱からところどころ変色した手紙の束を発見する。封筒に書かれた宛名の几帳面な字に見覚えがあった。父のものだ。
「ラブレター」と箱の表に書いて、キャビネットに戻す。
他の箱を開けていたアネが「あ!」と言う。手にはまた手紙の束。それもエアメールです。まだ封筒の枠に縞々がついていた頃のもの。中の便箋を取り出すと、そこにはキレイな筆記体のアルファベットが並んでいた。
アネと2人で顔を見合わせる。今、その英文を読む気力はない。再び箱に戻す。
後日母にその手紙のことを尋ねると、全く覚えがないと言う。
相手が男性なのか女性なのかもわからない。手紙の内容もわからない。というか、調べるつもりもないけど。思い出の底の方に沈めておこう。
整理が終わって、実家の心臓部をキレイにしたような、爽快感。
あとは無理せず、気長に片付けることにします。