この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。
今回の相談者は、これから父親の介護が始まりそうだという春子さん(53歳)です。
Q:同じ市内で一人暮らしをする80歳の父が自宅で転倒し、足を骨折して入院しました。今は病院でリハビリに取り組んでいます。
退院後は自宅へ戻る予定ですが、生活のさまざまな場面で介助が必要になりそうです。
これからの生活や父の介護について相談したいのですが、どこに相談すればよいのかわかりません。
相談できる窓口はどこにあるのでしょうか。
A:わたしがこれまで関わってきた家族介護者の方からも、親の介護に直面したときに
「相談先がわからず途方に暮れた」「身近に相談できる人がいなかった」という声をよく聞いてきました。
介護に関する疑問や困りごとを相談したい場合は「地域包括支援センター」が身近な相談窓口です。
すべての市町村に1カ所以上設置されており、
「今後介護が始まりそうで不安だ」「どこに相談していいかわからない」といった方が、安心して一歩を踏み出して相談できる最初の窓口となっています。
今回は、高齢者とその家族の強い味方になってくれる「地域包括支援センター」について紹介します。
1.介護の相談窓口は地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、必要なアドバイスや支援を行う総合相談窓口です。行政から委託を受けた社会福祉協議会や民間の社会福祉法人、医療法人などが運営しています。
地域包括支援センターには、社会福祉士・主任ケアマネジャー・保健師などの資格を持つ職員が在籍し、専門的な知識を用いて高齢者本人やその家族からの相談に無料で応じています。
直接行って相談できない場合は、電話や訪問による相談も可能です。
相談内容によって必要な福祉・医療サービスや制度の紹介を行い、
地域包括支援センターだけで対応できない場合は、ほかの専門機関への橋渡し役も担うなど心強い味方になってくれます。
また、これから介護保険の申請を検討している方には、手続きのサポートや本人や家族が申請できない場合は「 代行申請」も依頼できる頼もしい存在です。
地域包括支援センターの場所がわからない場合は、
自治体のWebサイトで確認するか、市町村役場の介護保険課、高齢福祉課へ問い合わせましょう。
地域によって「高齢者支援センター」「長寿サポートセンター」などと呼び方が異なる場合があります。
2.地域包括支援センターの役割・業務
地域包括支援センターの役割は、介護、福祉、保健、医療などさまざまな面から高齢者やその家族を総合的に支援することです。
そのために、主に以下の4つの業務を行っています。
・総合相談支援
高齢者の相談を総合的に受け付けて、必要なサービスにつなぐ支援
・介護予防ケアマネジメント
要支援1・2の人の介護予防ケアプランの作成、介護予防に関する支援
・権利擁護
成年後見制度、高齢者虐待などに対する相談
・包括的・継続的ケアマネジメント支援
ケアマネジャーの支援、地域ケア体制の構築
3.地域包括支援センターで相談できること
地域包括支援センターは、介護の悩みや心配ごと以外にも、お金や財産、医療、福祉、健康など日常生活のあらゆる相談に応じています。
ここでは、地域包括支援センターに寄せられた具体的な相談事例の一部をご紹介します。
介護のこと
- 高齢の親の一人暮らしが心配
- 介護に疲れて、親にきつくあたってしまう
- 親の足腰が弱まってきて、寝たきりにならないか心配
- 現在入院中で退院後の生活が不安
お金のこと
- 介護費用が払えそうにない
- 頼れる家族が身近にいないため、将来のお金の管理に不安がある
- 悪徳商法の被害にあった
- 成年後見制度について教えてほしい
健康のこと
- 親が認知症かもしれない
- 持病のある親が心配
- 最近、身体が弱ってきた
- 薬の飲み忘れが増えている
介護保険のこと
- 介護保険はどうやって利用するの?
- 介護保険サービスについて知りたい
- 利用しているサービス事業者のことで相談したい
- 高齢者の施設について教えてほしい
近所の高齢者のこと
- 隣の家の人から「物を盗った!」と責められる
- 虐待にあっている人がいるようだ
- 近所の人が、介護に疲れたと言っている
4.地域包括支援センターに相談する前にしておくこと
地域包括支援センターの相談員は、高齢者本人や家族の状況を把握するため、相談者に質問をしながら話を聞いていきます。
そのため、相談する前にはメモなどを作成して、現在の状況を整理しておくことをおすすめします。
具体的には、以下のような情報を整理しておくと良いでしょう。
介護保険の認定は受けているか
- 認定は受けていない
- 認定を受けている場合→要介護度はいくつか、利用している介護サービス
親の状況
- 自宅にいる・入院中・施設に入所中
- 自宅にいる場合→子や親族と同居・別居
- 別居の場合→近距離か遠距離か
- 身体状況(健康状態、歩行状態など)
- 日常生活の状況(食事、入浴、排泄、家事、内服薬の管理、金銭管理など)
子や親族の状況
- 主な介護者は誰か(実際の介護を担う人)
- キーパーソンは誰か(介護の方針を決定する人、連絡窓口となる人)
- 介護に関われる時間(遠距離のため難しい、仕事の時間以外は可能、仕事が休みの日のみ可能など)
5.地域包括支援センターに相談してみましょう
地域包括支援センターは、高齢者やその家族が住み慣れた地域で安心して暮らしていくために欠かせない存在です。
介護の不安だけなく、日常生活の悩みまで親身になって相談にのってもらえます。
相談は無料なので、困ったことがあれば、まずは気軽に相談してみましょう!