介護のきほん vol.2
そもそも介護保険ってどのような制度なの?

この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。


Q:今は元気に暮らしている両親ですが、どちらも75歳以上と高齢のため、いつ介護が始まっても困らないように準備をしておきたいと思っています。
そもそも介護保険とはどのような制度なのでしょうか?

A:ご両親の介護の準備をしておきたいとのことですね。
介護保険制度を理解しておくことで、介護の準備を進めたり、いざ親に介護が必要になったときに慌てず対応したりすることができますよ。
今回は介護保険制度について、基本的な仕組みや介護保険の対象者、サービスの利用方法について紹介します。

1.介護保険とは、介護される人を社会全体で支える制度

介護保険制度は、医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険に次ぐ5番目の社会保険として、2000年4月にスタートしました。
この制度ができた背景には、急激に進む高齢化により、寝たきりや認知症など介護を必要とする高齢者が増加したことにあります。また、核家族化の進行による介護の担い手不足や高齢者が高齢者を介護する「老老介護」、高齢者の一人暮らしも増えています。
このような状況に対応するため、高齢者の介護を社会全体で支える新しい仕組みとして導入されたのが介護保険です。

2.介護保険制度の仕組み

介護保険制度の仕組みを図にまとめると以下のようになります。

◾️加入者(被保険者)
40歳になると被保険者として介護保険に加入し、介護保険制度の運営主体である市区町村に、介護保険料を支払います。
被保険者は、要介護認定を受けて「介護が必要な状態」と認められると、所得に応じた1〜3割の自己負担額で必要な介護サービスを利用できます。

◾️市区町村(保険者)
保険者である市区町村(東京都の23区を含む)は、介護保険を申請した被保険者に対し要介護認定を通知し、介護保険被保険者証の交付を行います。
サービス提供事業者に対し、被保険者が実際に利用した介護サービス費用の7〜9割を介護保険の財源から支払います。

◾️サービス提供事業者
サービス提供事業者とは、介護サービスを提供する事業者のことです。
例えば、訪問介護事業所や特別養護老人ホーム、ケアプランセンター(居宅介護支援事業所)などがこれにあたります。

サービス提供事業者は、要介護認定を受けた被保険者に対して、直接サービスを提供します。
また、保険者に対してサービス費用の請求を行います。

介護保険の被保険者は2種類に分けられる

介護保険の被保険者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分けられます。

  • 第1号被保険者:65歳以上の人
  • 第2号被保険者:医療保険に加入する40〜64歳までの人

さらに、介護保険料の支払い方法も以下のように年齢で異なります。

  • 第1号被保険者:原則として公的年金から天引き
  • 第2号被保険者:健康保険料に上乗せされる形で健康保険組合が徴収

介護保険料の支払いは、満40歳に達したときから一生涯続きます。

3.介護保険は誰でも利用できる?

介護保険のサービスを利用できるのは、原則として第1号被保険者となる65歳からです。
65歳以上の方は、原因を問わず要介護あるいは要支援状態と認定されるとサービスを受けられます。

一方、第2号被保険者(40〜64歳)の方は、
国が定めた16の「特定疾病」により、要介護認定を受けた場合に限り、介護保険のサービスが利用できます。

16の特定疾病とは、老化が原因とされる以下の16種類の病気のことです。

末期がん関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症後縦靱帯骨化症
骨折を伴う骨粗鬆症初老期における認知症
進行性核上性麻痺、
大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症早老症
多系統萎縮症糖尿病性神経障害、
糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
脳血管疾患閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患両側の膝関節または股関節に
著しい変形を伴う変形性関節症

4.介護保険のサービスを利用するにはどうすればいいの?

ここからは、介護保険サービスを利用するまでの基本的な流れを見ていきましょう。

STEP① 市区町村の窓口に相談で相談
 ↓
STEP② 要介護認定の申請
 ↓
STEP③ 訪問調査を受ける
 ↓
STEP④ 要介護認定の通知が届く
 ↓
STEP⑤ ケアプランを作成
 ↓
STEP⑥ サービス提供事業者と契約する
 ↓
STEP⑦ サービスの利用開始

・STEP①②
介護保険のサービスを希望する場合は、お住まいの市区町村の窓口で「要介護認定」の申請が必要です。
申請は、本人または家族が行いますが「家族が仕事で忙しい」「遠方に住んでいるので対応できない」などの事情で、
窓口に出向くことが難しい場合は「地域包括支援センター」が無料で申請を代行してくれるので、相談してみましょう。

・STEP③
申請が受理されると、市区町村の調査員が、本人の自宅(または入院先の病院など)を訪問して本人の状況を確認します。
一方、申請を受けた市町村は、本人の主治医に対して意見書の提出を依頼し、
認定調査の結果と主治医の意見書を基に要介護認定の審査・判定を行い、要介護度を決定します。

【要介護認定の結果】
要介護認定の結果は要支援1・2から要介護1〜5までの7段階と非該当(自立)に分かれています。
そのうち、介護保険のサービスを利用できるのは、要支援1・2、要介護1〜5のいずれかに認定された方です。
非該当(自立)と認定された方は、介護保険のサービスは利用できません。

・STEP④
要介護認定の結果は、申請から約30日以内に本人に郵送で通知されます。
なお、緊急を要する場合は、認定を待たずにサービスの利用を開始することができますので、要介護認定の申請時に窓口に相談してみると良いでしょう。

・STEP⑤⑥
認知結果が出たら、ケアマネジャーとケアプランを作成し、各サービス提供事業所と契約することで初めて介護保険のサービスを利用できるようになります。

5.要介護認定のタイミングは?

「要介護認定を申請するタイミングはいつなのか?」と気になる方もいるのではないでしょうか?

親の介護が初めての介護経験となる場合、介護保険を申請するタイミングがわからないという方も少なくありません。
そのようなときは、お住まいの地区にある地域包括支援センターへ相談しましょう
専門のスタッフが申請が必要かどうかを判断し、必要な場合は要介護認定の申請を手伝ってくれます。

地域包括支援センターは、介護保険に関する相談はもちろんのこと、高齢者の暮らしに関わることであれば、どのような内容でも気軽に相談することができます。

高齢者本人やその家族にとって心強い味方となる機関ですので、悩みや心配ごとがあるときには、
地域包括支援センターを活用すると良いでしょう。(地域包括支援センターについてはこちら

介護保険で受けられるサービスの種類は、次回の記事でご紹介します!