親が元気なうちに始めたい、終活のススメ

親子で作るエンディングノート

人生100年時代、親世代に変化が訪れるように、子ども世代も年齢を重ね、体調や生活の変化に直面します。いずれ訪れるさまざまな変化に対応するためにも、終活に取り組んでおくことは大切です。

このコラムでは、親子でいっしょに終活に取り組むためのアイディアをご紹介します。ぜひ参考にして、親子のコミュニケーションに役立ててください。

老い方は人それぞれ。そして、どのような老後やどのような介護を望むかも、それぞれです。

エンディングノートは、自分が亡くなったときや、病気や認知症で気持ちを伝えるのが難しくなった場合に備えて、大切な情報をまとめておくものです。そして「もしものとき」のためだけでなく、人生を振り返ったり、未来を見通すためにも役立ちます。

そこで今回ご提案したいのが、「親子で作るエンディングノート」。将来の希望や未来の目標について話し合ったり、思い出を振り返ったり。成熟した親と子の、コミュニケーションの機会になると思います。

親の病気や介護、看取りは、突然やってくる

ここで、私の自己紹介をさせていただきますね。

行政書士・終活アドバイザーとして活動している、岩﨑真理と申します。私は以前、祖母・母・私たち家族(私と夫、子どもふたり)の4世代で暮らしていました。祖母は90代後半、母は60代後半で、自宅で祖母の介護をしていました。子どもたちにとっては、高齢の曾おばあちゃんと暮らし、ともに介護に携われたことは貴重な経験になったと思っています。

そんな祖母も、だんだんと体力が衰え99歳で自宅で亡くなりました。高齢の親の介護と看取りは、母にとっても大きな負担だったようで、祖母が亡くなってすぐに、母が寝込んでしまったのです。

最初は介護疲れで体調を崩したのだと思っていたのですが…。なかなか回復せず、病院に行ったところ、「悪性リンパ腫」と診断されました。祖母を亡くして間もないうちに、母に大きな病が見つかり、家族はパニックになりました。

難しそうな病名に、突然の長期入院、抗がん剤治療。髪が抜け、痩せていく母を見るのはとても辛い日々でした。さまざまな副作用を乗り越え、治療がひと段落ついたと思ったら、再発。「治療を続けるか、緩和ケアに移行するか」という難しい選択を迫られました。

今は、インターネットで検索すれば、さまざまな情報があふれている時代です。家族それぞれが情報を集め、「ほかの病院を受診してみよう」「民間療法はどうだろう」と、いろいろな意見が出ました。結局、母自身が「治療はやめ、緩和ケアに移行する」と決断しました。そして半年ほどで、母はホスピスで亡くなりました。

終末医療について、母は自分で判断しましたが、これが自身で判断できないケースだと、家族の苦悩も相当だと思います。

また、母が亡くなった後には、私たちが暮らしていた家の相続問題が発生しました。家というのは、それぞれに思い入れも違いますし、処分については意見が分かれることもあります。祖母と母を続けて失い、悲しみの中で相続手続きを進めていくのは、精神的にも辛いものがありました。

こういった経験から、元気なうちに自分自身の「介護」「終末医療」「看取り」「遺産相続」といったことにも、きちんと目を向け、後世にトラブルの種を残さないよう、意思を示しておくことはとても大切だと感じました。

そこで今は、行政書士・終活アドバイザーとして、終活に関する情報を発信しています。

親が亡くなった後の苦労を、親は知らない⁉

わたし自身、60代の母に“終活”を勧めて「そんなこと、今はまだ必要ないよ。たいした財産もないし~」と笑い飛ばされた経験があります。親に対して「死」や「介護」「遺産相続」の話を切り出すのは、簡単なことではありません。

また、親世代は、自分が親の遺産相続で、苦労していないというケースも多いものです。高齢化社会が進み、個人情報保護意識の高まりなどから、相続手続きは、どんどん煩雑になっています。

以前ならそこまで細かく手続きや確認を求められず、スルっと相続手続きが完了した…という妙な成功体験があるからこそ、親は自分の死後のことも、「なんとかなるでしょ」と考えているのかもしれません。

親に“終活”を切り出して、親が怒り出したり、笑い飛ばしたりするケースもよくあります。

直接切り出しにくい場合は、親とお付き合いのある第三者を介して話してもらうのも良いでしょう。また「〇〇ちゃんのお家、お父さんが亡くなった後、相続手続きがたいへんだったらしいの」といったように、“誰か”の話として話題にするのもひとつです。

時代の流れとともに、人が亡くなった後の手続きはどんどん煩雑になっているという事実を、親世代にも理解してもらうことが大切です。

終活の入り口にエンディングノート

介護や終末医療、死後の手続き、相続といった重めの話題を取り扱うには、エンディングノートは良いきっかけになります。まずは楽しい思い出を振り返ったり、未来の目標を立ててみるのが良いでしょう。“死”を意識して書くのではなく、人生を楽しむために書くという視点で取り組むことがポイントです。