わたしと夫と、ときどき母と。vol.3
ー母の介護を最小限の負担ですませるために生かされる、夫の介護ー

この連載では、instagramでもご自身の夫の在宅介護を綴っていらっしゃる、イケヤイクコさんに、ご自身のいままでのこと。そしてこれからのことを語っていただいています。


私の夫は、認知症をわずらっていて、現在は要介護5。日常のさまざまな場面で介助や介護が必要だ。
そして、私の母は、パーキンソン病をわずらっていて、現在は要介護2。日常生活のどのような場面で介助や介護が必要なのかは知らない。

両親とは、かれこれ、2か月近く合っていないような気がする。ちなみに、うちから実家は、車で10分だ。
なぜ会いに行かないのか。興味がないからだ。

先日、「顔が見たい」と言う母の電話に、「私は別に見たいと思わない」と返した。
もし、私を実家に来させたければ、パソコンやタブレット、ネット(Wi-Fi)関係の不具合を装えばいい。そうすれば近いうちに行く。
両親では、どうすることもできないが、業者に頼むとお金がもったいないので、私がなんとかする。

父は、家のことなら大抵のことができる。
だから、母がなにひとつ家のことをしなくても、父の負担が増えるだけで、それ以外に困ることはない。
もし、父の負担が重くなりすぎても、私がその負担を軽くするために家に通うことはない。
家での母の生活が、父の支えだけでは成り立たなくなれば、母は施設だと、私は以前から言っている。

私には、兄と妹がいるが、たぶんふたりとも私と同様に、実家に通い、父や母の手伝いなどは、しないであろう。
気がかりなのは、母の介護には、母、父、兄、私、妹の5人が家族として関わるかもしれないことである。

夫の介護や医療については、夫の病が認知症で、自身の今後について、意思表示ができないことと、夫の身内が夫に関することを私に一任してくれているので、すべて私が決定している。

それが負担に感じる人もいるだろうが、私にとっては、そちらのほうがいい。
すべて私の責任だし、私の決断について、もめることもない。

夫の身内は、手は出さないし(そもそも遠方)、口も出さない。
そして、私に感謝してくれる。これがいかにありがたいことであるか、周りの人たちの話を聞いているとしみじみ思う。

だから私は、その姿勢でいてくれる、夫の身内に感謝している。

介護は、家族や親戚を巻き込み、家族仲や親戚づきあいを崩壊させる可能性がある。
特に兄妹間で、もめやすいのが介護負担の差であろう。
めちゃくちゃ尽くす子と、なにもしない子がいて、そこにお金が絡んでくる。

私が、生まれ育った家族のなかで、唯一、仲たがいしたくないと思っているのが妹であり、母の介護において、一番気にかけているのが、母のことでも父のことでもなく、妹との関係維持だ。

その次が、最小限のエネルギーで、なるべく面倒くさいことにならないように、立ち回ることである

母は、パーキンソン病と診断される1年ほど前から、運動機能の低下が見られ、
ある日、家の周りをひとりで散歩していたら、転倒して自力で起き上がれず、携帯で父を呼び、父に抱きかかえられるようにして帰ってきたことがあった。

その直後、父から、そのようなことがあったとLINEが届き、私はすぐさま、知り合いの地域包括支援センターの人に電話をして、実家に行ってくれるように頼んだ。

次の日、実家に来てくれた、地域包括支援センターのスタッフさんに、介護保険の申請手続きをしてもらい、おそらく要支援は出るであろうということで、次の日には、ケアマネージャーも決まっていた。
結果、母は要支援2だった。

たぶん、私がいなければ、もしくは、私に介護保険の知識がなければ、母の介護保険の申請は、もう少し先のことになっていたであろう。

夫の介護の経験が生かされた出来事だった。
その後も、夫の介護の経験は、母の介護に生かされ、母は早い段階でいろいろなサービスを受けていくことになる。

そして、そのサービスのおかげで、母の介護について私が気をもむようなことは、今のところない。