以前、「認知症ってなんだろう?」をテーマに記事を書いていただいた認知症のケアに携わる看護師で、日本認知症研究会副代表の、松崎一代さんの新しい連載になります。
松崎さんは、笑顔がよみがえる医療と介護の「9つのポイント」という小冊子を制作しました。
今回はその小冊子の中から、少しでも皆様の日々の介護にお役に立てればという思いを込め、松崎さん自身の経験も交えながら、9つのポイントのまず一つ目からお話をしていただきます。
認知症にはさまざまな種類がある。症状からわかる認知症の見分け方
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症。実は認知症の中で一番多いと言われてます。慣れた道を迷いはじめるなどの症状があらわれます。
しかしながらとにかく明るい方が多く元気がある印象で、質問に対しても取り繕う方が多く、一見認知症かな?と疑うこともあります。長谷川式という認知機能検査の中で、遅延再生テストというものがあります。
「さくら、猫、電車」この言葉を覚えておいてくださいね、と次の質問に進み、その後さっき言った3つの言葉を覚えていますか?と聞くと、アルツハイマー型認知症の方はお答えできません。短期記憶障害が顕著なのです。
そして、よくみられるのは物とられ妄想です。「通帳がなくなった」、「お金を盗られた」など言うことがあります。そんな時どうするか・・・まずは一緒に探してあげることです。

レビー小体型認知症
レビー小体型認知症。この認知症は、幻覚、幻聴、身体の傾きが特徴的です。小刻み歩行もあり、パーキンソン病に似ています。
実はレビー小体病というくくりの中にレビー小体型認知症とパーキンソン病がありますので、症状が似ているのです。
「あそこに黒い犬がいるわね」「あそこに人が何人かいるわよ」など、よく聞かれます。
そこで「いないよ」「見えないよ」というのは相手を否定することになってしまうため、
「どこどこ、逃げちゃったね」「何人いたの?見て来るね」などで返事すると、安心されます。

脳血管性認知症
脳血管性認知症。これは脳梗塞や脳出血などの後遺症で起こる認知症です。
喜怒哀楽が激しい、感情失禁(感情の調整が上手くいかず、泣いたり笑ったり怒ったりといった感情が過度に出てしまう状態)があります。後遺症で嚥下(食事の飲み込み)が悪かったり、麻痺が残ったりされていることもあります。
また夜間になると徘徊、せん妄が起こることがあります。
前頭側頭葉型認知症(ピック病・意味性認知症)
前頭側頭葉型認知症、これは急に怒り出したり、暴言を吐いたり、暴力という症状がでます。その後ケロッと忘れてしまいます。
この認知症はピック病と意味性認知症認知症に大別されます
ピック病とは常識や他人への思いやりが欠け、脱抑制や常同行動が起こります。気に食わないことに我慢できずいつも怒っていたり、不機嫌で偉そうな態度をとる、万引きなどの反社会的行為をする、家がゴミ屋敷になっている、手で膝をこするなどの常同行動がでる、などの傾向があり、そして甘いものが大好きな方が多いです。
意味性認知症とは一見穏やかで普通にみえますが、会話すると嚙み合わないのが特徴です。物の名前がでてこない、例えばリンゴを見ても食べ物を理解できない、相手の言葉が理解できない症状があります。「鼻をつまんで」というと鼻を指すなど、言葉の理解が低下します。
まとめ
診断の質が「天国と地獄の分かれ道」になります。誤診によって適正な薬が出ていなければ次のようなことが起こります。
例えばレビー小体型認知症、ピック病の方をアルツハイマー型認知症と誤診して抗認知症薬を処方、副作用で動きが悪くなったり、余計に興奮したり、そして副作用を抑えるために向精神薬や抗パーキンソン役を使って症状も診断も混乱させてしまうことがあります。
認知症の特徴を知っておくことは大事なことです。