この連載では、さまざまな状況で介護を担っている方を取材し、「介護をラクにする工夫」「大変なこと」さらには「介護に対する本音」について伺い、実際の1日スケジュールと介護に関連した月額の費用もご紹介します。
初回は、10日に1回のペースで電車を乗り継ぎ約50分の実家に通っているKさん(56歳)にお話を伺いました。
Kさんの場合、高齢のご両親が住む実家に通っていますが
「介護と言うより家事手伝いが中心ですが、ちょっとこの先は不安」とのこと。
介護認定を受けるまでではないけれど、老親のお世話をしに行くご家庭は少なくありません。いずれ「実家に通わなくてはならないかも」と漠然と思っている方にとっても参考になればと思います。
80代の両親は元気だが“手伝いが必要”な実家へ「通い介護」
Kさんご家族のプロフィール
夫(61歳、薬品会社勤務)、次男(大学生、自宅から通学)と東京郊外のマンション在住。
長男はすでに独立。Kさんは週3日、近くの量販店にパート勤務。
Kさんのご両親は父(82歳・持病あり)母(80歳)、埼玉県内の一軒家にふたり暮らし。
・通い介護を始めたきっかけ
ご両親が75歳を過ぎた頃から、Kさんも気にかけて、年に何度かは実家に顔を出していました。本人たちで暮らしは成り立っているものの、行くたびに掃除が行き届いていない様子にKさんも心配になったそう。
「聞けば足腰が辛いので2階はもう半年以上、上がっていないと言うんです。
それで上に行ってみたら、むぅっと嫌な匂いがするし、カビの生えたペットボトルも置きっぱなし。冷蔵庫の中もパンパンなのに、今すぐ食べられるようなものがないんです。
ご飯はどうしているのかと聞くと、ほとんどがすぐ近くのコンビニで購入していました。それで最初は、たまには手作りで温かいものを食べてもらい、話し相手をしながら掃除を手伝おうと思って実家に行きました」
明確にいつからと言う感じではなく、だんだんと行く回数が増えて、そのうちに「定期的に訪れることが暗黙の了解になった」そうです。
ちょっと遠い実家に月3〜4回「中距離の通い介護」1日のスケジュール
中距離通い介護について教えてください!
1)通い介護で大変なことは?
中途半端な距離で、行こうと思えば行けるところが逆に大変なことも……。
最近は頻繁に電話がかかってきて、「明後日行くから」と言っても、長々と話し出したり、時には「これから来てくれない?」と言われたり。
最初は親も遠慮がちで、あなたにも家族があるのだから無理しないでというスタンスでしたが、次第に馴れてしまい「手伝いに来るのが当たり前」になってしまうんですね。
できれば自立するための手伝いでありたいのですが、そこまで気が回りませんし、細かなところで老化現象がハッキリしてくるので「これからどうすべきか」を考えるのも大変です。
定期的に通うと行き帰りだけでも疲れます。毎回の交通費などはそれほどでもありませんが、結局疲れて外食になりがちで「見えないお金が出ている」ことも負担になっています。
2)介護をラクにするために行っていることは?
・その日の愚痴はその日のうちに吐き出す!
・自分の趣味など「自由な時間」を大切にする
・いずれ公的支援や施設の利用もありだと心の準備をしておく
・できないことを数えずに「やってあげられること」をしている自分を褒める!
実家に行った日はUberや外食ですませ、夫には愚痴を聞いてもらっています。
さんざん親の愚痴を聞いていることを愚痴る……のを聞く夫も本当は辟易しているかもですが、とにかく「うんうん」と聞いてくれるのはありがたいし、吐き出すことで気持ちがラクになります。
あとは週末を利用して趣味のテニスやショッピングをして、「親のことばかりに追われている気分」を解消するようにして、なんとか続けてこられました。それも、ちょっと限界になりつつある……。
どこかでいったん仕切り直して、公的支援を利用しなければと思いつつ、なかなか実行できていませんが、いつかは施設の入居などもあると心構えをしておくことも「いつまで続くのか」と悩まずにすむのかなと感じています。
どこまでやればいいのかと考えてしまうときついので、
それよりも「これだけやっているんだ」と自分のしていることを自分で褒めるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。
3)介護の本音とこれからへの思い
同居で介護している友人の話を聞くと(うちなんて、ラクな方なんだよな)と思うけれど、一方でわたしが月に数回の通い介護をしていることに対して「それくらいなら仕方ないわよ」と言われてしまうと何も言えず、逆にストレスが溜まるので、最近はもう介護の話題には関わらないようにしています。
親の相手をしていると面倒くさくなる瞬間があり、後になって(なぜ、あんなキツイ態度をとってしまったのか)(ひとりっ子で大事に育ててもらったのに)と今度はひどく落ち込んでしまうこともあります。
それでも、毎回のことながら嫌な顔も見せずに話を聞いてくれる夫。
LINEで「頑張りすぎるなよ!」と励ましてくれる友だち、すでに介護を経験ずみの先輩ママ友は、具体的なアドバイスをくれたり、制度を利用することは親不孝ではないんだと気持ちを楽にしてくれる話を聞かせてくれたり、介護を始めてから自分は「人に恵まれている」ことを改めて感じています。
よく言われる通り、「介護をひとりで抱え込まないこと」は本当に大切です。それは同時に「どれだけ多くの人が自分を支えてくれているか」に気づく機会でもある。
正直、大変なことだらけですが、いずれ自分も通る道が「老い」ですから、なるべく後ろ向きにならずに、自分も親も「日々是好日」でありたいと思っています。
わが家の介護家計簿
月額:19,400円
実家に行った日は疲れて外食をするため他に約20,000円ほどの支出あり
介護の前段階から「介護」は始まっている
Kさんの場合、たとえば入浴介助や寝たきりの親のお世話といった、いわゆる本格的な介護の「前段階」と言えます。
前段階とはいえ、高齢になった親の生活を支援するのは大変ですし、家庭のサポートも介護の一面であるのも事実。
親の生活に不安を感じるようになったら、早め早めに老後の暮らしについて具体的に考えていくことも必要です。まずは地域の包括支援センターに相談してみるのがおすすめです。
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