この連載では、ケアマネジャーである筆者が、介護に関する知識や情報、親の介護を少しでもラクにするためのヒントをわかりやすくご紹介します。
Q: 入院中の母(83歳)が退院することになり、要介護2の認定を受けました。一人暮らしに戻る予定で、ケアマネジャーから訪問介護をすすめられています。訪問介護とはどのようなサービスなのでしょうか?対象になる人や費用、利用までの流れについて教えてください。
A: 訪問介護とは、ホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問して、入浴・排せつ・食事などの「身体介護」や、掃除・洗濯・買い物などの「生活援助」を行う介護保険サービスです。
今回は、訪問介護の概要や対象者、費用、メリット・デメリット、利用までの流れをご紹介します。
1. 訪問介護とは?サービスの概要
訪問介護は、介護保険で利用できる在宅サービスの一つです。ホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問し、住み慣れた自宅で自立した生活を続けられるようサポートします。また、家族の介護負担を軽減する役割もあります。

2. 訪問介護の対象者(利用できる人)
訪問介護を利用できるのは、要介護1〜5の認定を受けた方です。
要支援1・2の方は、介護保険の訪問介護ではなく、市区町村が運営する「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の訪問型サービスを利用します。サービス内容は訪問介護とほぼ同じですが、料金や提供事業者が市区町村により異なります。
| 訪問介護 | 総合事業の訪問型サービス | |
| 対象 | 要介護1〜5 | 要支援1・2、事業対象者 |
| 提供主体 | 都道府県指定の事業者 | 市区町村が指定した事業者住民主体の団体など |
| 内容 | 全国一律 | 市区町村により異なる |
参考:公益財団法人長寿科学振興財団「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスとは」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigoyobou-service/yobou-houmon-kaigo.html
3. 訪問介護のサービス内容(3つの区分)
訪問介護のサービスは、大きく3つに分けられます。
①身体介護
利用者の体に直接触れて行うサービスです。食事や入浴、着替えの介助、トイレ誘導、オムツ交換などの排せつ介助、清拭、体位変換などが含まれます。あわせて、本人の状況に応じて、自立を促すための見守りや家族への介助方法のアドバイスも行います。
医療的ケア(たんの吸引や経管栄養など)についても、所定の研修を修了したホームヘルパーであれば対応可能です。
②生活援助
掃除、洗濯、調理、買い物代行、薬の受け取りなど、利用者の日常生活を支援するサービスです。利用者本人のためのサービスに限られるため、家族の分の食事作りや家族との共用部分の掃除などは対象外となります。
なお、家事ができる家族と同居している場合は、原則として生活援助は利用できません(市区町村によって判断が異なる場合があります)。
③通院等乗降介助
通院などの際に、ホームヘルパーが運転する車への乗り降りや、病院での受診手続きをサポートするサービスです。「介護タクシー」とも呼ばれます。(※対応していない事業所もあります)
4.訪問介護で頼めないこと
訪問介護は利用者本人の自立を支援するサービスのため、次のような内容は頼むことができません。
| 項目 | 具体的な行為 |
| 利用者本人以外のための行為 | 家族の食事作りや洗濯、家族と共用部分(リビング・浴室など)の掃除、来客対応など |
| 日常生活の援助に該当しない行為 | ペットの世話、庭の手入れ、大掃除、窓ガラス磨き、家具の移動や模様替えなど |
| 医療行為 | 点滴や床ずれの処置など(※たんの吸引・経管栄養は研修修了者であれば対応可) |
| 本人の財産に関わること | 金銭・貴重品の管理、預金の引き出しなど |
介護保険では受けられないサービスを希望する場合は、「介護保険外サービス」の利用を検討するとよいでしょう。
※ホームヘルパーに頼めること・頼めないことについては、【介護のきほん vol.21】ホームヘルパーには何が頼める?で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
5. 訪問介護の費用と料金の目安
訪問介護の費用は、サービスの種類と利用時間によって異なります。介護保険では月ごとの利用限度額が定められており、その範囲内であれば、1〜3割の自己負担で利用できます。
◾️訪問介護の1回あたりの料金(自己負担1割の場合)
| 時間 | 1回あたりの料金(1単位=10円) | |
| 身体介護 | 20分未満 | 163円 |
| 20分以上30分未満 | 244円 | |
| 30分以上1時間未満 | 387円 | |
| 1時間以上 | 567円(30分を増すごとに+82円) | |
| 生活援助 | 20分以上45分未満 | 179円 |
| 45分以上 | 220円 | |
| 通院等乗降介助 | 1回につき | 97円 |
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
このほかに、早朝・夜間・深夜の利用には加算料金がかかります。また、事業所により地域加算や処遇改善加算などが上乗せされる場合もあるため、契約前に総額を確認しておきましょう。なお、通院等乗降介助については、上記の介助料とは別にタクシー運賃(メーター料金など)が実費でかかります。
6. 訪問介護のメリット・デメリット
訪問介護の利用を検討する際は、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
【メリット】
- ・住み慣れた自宅で生活を続けられる
- ・利用者一人ひとりの状況に合わせた個別のケアを受けられる
- ・家族の介護負担を軽減できる
- ・利用した分だけの支払いで済む
- ・デイサービスのように外出する必要がなく、外出が困難な方も利用しやすい
【デメリット】
- ・ケアプランに記載されたサービスしか受けられない
- ・家族と同居の場合、生活援助の利用に制限がある
- ・ヘルパーとの相性が合わない場合がある
- ・1回あたりの利用時間が決まっているため、長時間の見守りには向かない
ヘルパーとの相性が合わないと感じた場合は、ケアマネジャーや訪問介護事業所に相談することで、担当を変更してもらえることがあります。
「知らない人が家に入るのは不安」という方も、初回はケアマネジャーや事業所の責任者が同行し、顔合わせから始めるのが一般的です。気になることや希望は遠慮なく伝え、納得したうえで利用をスタートできます。
7. 訪問介護はこんな方におすすめ
訪問介護は「住み慣れた自宅で自分らしく暮らし続けたい」という方に向いているサービスです。特に次のような状況の方にメリットが大きいといえます。

①自分のペースを大切にしたい方
これまでの生活習慣を大切にしたい方に向いています。施設のように決まったルールに合わせる必要がなく、自宅でいつものやり方(食事の味付けや掃除の仕方など)に沿ったサポートを受けられるため、無理なく自分のペースで過ごせます。
②特定の動作だけ不自由があり、そこを補いたい方
「食事の支度はできるけど、掃除や買い物が難しい」といった困りごとがある方に向いています。必要なサービスだけ依頼できるため「できることは自分で行い、できないところだけサポートしてもらう」という自立した生活を続けやすくなります。
③大勢の人と過ごすのが苦手な方
集団生活や知らない人と関わるのが苦手な方に向いています。ヘルパーと1対1の関わりのため、人見知りの方でも安心して関係を築きやすい点が特徴です。
④家族の介護負担を軽減しながら同居を続けたい方
家族だけですべてのケアを担うのは難しいものです。たとえば「家族が不在になる日中だけヘルパーに来てもらう」「オムツ交換や入浴介助といった負担の大きいケアを任せる」という使い方をすれば、家族の負担を軽減できます。
8. 訪問介護を利用するまでの流れ
訪問介護は、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて利用するサービスです。利用開始までの流れは次のとおりです。
- 1.要介護認定を受ける:市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターで申請します。
- 2.ケアマネジャーに相談:どのような場面で困っているかを伝え、訪問介護の利用を希望してい
- る旨を伝えます。
- 3.ケアプランの作成:ケアマネジャーがケアプランを作成します。
- 4.訪問介護事業所の選定・契約:ケアマネジャーから紹介された訪問介護事業所と面談し、
- サービス内容や費用を確認したうえで契約します。
- 5.サービス利用開始:ケアプランに沿ったサービスが提供されます。
ケアプランやケアマネジャーの役割については、以下もあわせてご覧ください。
【介護のきほん vol.18】ケアプランとは何ですか?、
【介護のきほん vol.16】ケアマネジャーとは何をする人ですか?
9. よくある質問(Q&A)
Q1. 訪問介護は週何回・月いくらまで利用できますか?
A1. 訪問介護には「週◯回まで」という一律の回数制限はありません。要介護度ごとに定められた「区分支給限度基準額」の範囲内であれば、他の介護保険サービスと組み合わせながら、比較的柔軟に利用回数や時間を設定できます。限度額を超えた分は全額自己負担になるため、実際に何回・何時間利用できるかはケアプランの内容によって異なります。具体的な回数や1か月あたりの費用の目安は、担当のケアマネジャーに相談して、ケアプラン作成時に確認するとよいでしょう。
Q2. 訪問介護とホームヘルパーは何が違うのですか?
A2. 「訪問介護」はサービスの名称、「ホームヘルパー(訪問介護員)」はそのサービスを提供する人(職種)を指します。混同されやすい言葉ですが、「訪問介護を利用する」「ホームヘルパーに来てもらう」のように使い分けると分かりやすくなります。なお、要支援1・2の方が利用するのは「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービス」です。受けられる支援内容は訪問介護とよく似ていますが、制度上は別の枠組みとなります。市区町村が運営しているため、サービスの内容や料金は地域によって異なります。
Q3. 家族と同居していても訪問介護は利用できますか?
A3. 身体介護は同居家族の有無に関わらず利用できます。一方で生活援助は、利用者本人のためのサービスに限られるため、家事を担える家族と同居している場合は原則として利用できません。ただし、同居家族が高齢・病気・障害などにより家事を行うことが難しい場合は、市区町村の判断によって利用が認められることもあります。同居家族がいて生活援助の利用に不安がある場合も、まずは担当のケアマネジャーに具体的な状況を伝えて相談してみましょう。
10. まとめ
訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪問して、身体介護や生活援助を提供する介護保険サービスです。通院時の乗降介助サービスを提供する事業所もあります。
要介護1〜5の認定を受けた方が利用でき、住み慣れた自宅で生活を続けたい方や、家族の介護負担を軽減したい方におすすめです。
実際のサービスは、ケアプランに基づいて提供されるため、生活での困りごとや希望するサービス内容を担当のケアマネジャーに具体的に伝えることが大切です。
訪問介護の利用を検討されている方は、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談してみましょう。
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